花の幽霊
とある日、樹玄は蜜秀の家に遊びに来ていた。
預けてある小型人魚ベニーレの『ことぶき』にかまっている。
無邪気なその人魚はきゃっきゃと笑っていて楽しそうだったが、突然何かを察知して樹玄の手の中から鉢に飛び戻り飛沫が散った。
そこに現れたのは、泣いている女の子を連れて来た蜜秀の妻「茶瑠」だ。
蜜秀は「その子、どうして泣いている?」と聞く。
「それが・・・相談があるって」
「ん?何であろう?」
「かわいそうだよーー!!」
いきなり大声でそう言ってますます泣き始める女児に、面々は困惑した。
樹玄が「どうして泣いているんだい?」と聞く。
「花のオバケが、可哀想なんだよーー!!」
「「花のオバケ・・・?」」
樹玄が「霊?」とぼやくと、蜜秀が「分からん」と返す。
茶瑠が「名前はスイカって言うらしいです」と女児を示すと女児がうなずいた。
「どんな字でスイカと言う?」
「水の花で水花だよ」
「意味は?」
「父様と母様が、わたしがお腹に来た日に同じ夢を見たの。水中花」
「ほう」
「水中花、って名前は響きが悪いから「スイカ」って名前になったよ」
「分かった、分かった・・・それで、何を相談したいんだい?」
「砂漠地帯があるでしょう?」
「ああ、あるな」
「そこの近くに住んでるんだけど、砂漠に花のオバケが出てくるんだよ」
「・・・うーん。オバケ?」
「そう。難しい言い方は知らないけど、幽霊みたいなの」
「花の?」
「そう。いっぱい」
「・・・うーん・・・可哀想なのは何故?」
「何て言って良いのか分からないよ」
「うんうん。いつ頃聞えるんだ?」
「時々、起きてるのに夢が見える」
「「白昼夢」」
「ん?」
「いい、いい。気にするな。樹玄、どう思う?」
「少し興味がある。花のオバケ。霊だろうか」
「見てみたい、と?」
「うんうん」
「・・・仕方ない。水花、今度、砂漠地帯を見に行くよ」
「退治しないで!!」
「ん?」
「護ってあげて!」
「うんうん。目の当たりにしたら、何か分かるかもしれんからな」
「・・・うん。お話聞いてくれてありがとう」
「うんうん。ベニーレを知っているか?」
「瓦版のやつ?いないと思う」
「ほれ」
金魚鉢の中にいたベニーレを見つけて、水花は大喜び。
ことぶきも水花を気に入ったようで、樹玄と親しく話を盛り上げた。
家に帰ると言って靴を履いた水花は、砂漠地帯で何かあったら水花を呼んでと言った。
分かったよ、と蜜秀が言うと、水花は少し明るい表情になって帰って行った。
――
――――・・・
数日後、蜜秀と樹玄は砂漠地帯に来ていた。
予想はしていたが、熱い。
しばらく砂漠地帯の様子を見ていたが、特に何も見当たらない。
仕方なく街に戻って店で食事をする。
サソリ料理をおすすめされたが、断った。
結局、辛く味付けされた豆スープと蒸し鶏野菜を食べた。
「これからどうする?」
「水花に会いに行ってみるか」
「それもそうだな」




