かまきり
蜜秀は傾けていた杯を口元で止めた。
「・・・まぁ、見える時は見える」
「そうなのかっ?」
「それに困っているのか?」
「そうなんだ・・・」
「急に見え始めたのか?」
「うーん・・・よく分からん。いつの間にかだった気がする」
「ふぅん」
蜜秀が酒を飲んだので、それに習って樹玄も酒をいただいた。
心地よい風が吹いて、発光花粉がふよふよと近くにいた。
蜜秀はそれに微笑して、指先でその光を突いた。
少し逃げるように見えた発光花粉に蜜秀が息を吹きかけると、向こう側へと飛んで行く。
子供じみた面もあるのか、と樹玄は思った。
「赤い着物に団子頭の女児か?ここへ案内をしたのは」
「ああ、そうだ。近所の娘っ子なんだろう?」
「そうだな。可愛い子でな、干し柿が好きだと言っていた。庭の花を見に来る子だった」
「綺麗な花だな」
「シュアザローナだ」
「ややや。まさかとは思ったがっ・・・本で読んだことがあるぞ。食べれるのかっ?」
苦笑する蜜秀。
「いや、シュアザローナ違いだ。こちらのは食べれん」
「なんだ・・・でも、見れて嬉しい」
「そうだな」
「・・・その女児な、もしかしたら霊なんだ・・・」
「分かっている。最近、何者かに殺められたと聞く」
「それは何故?」
「通り魔なんだそうだ」
「許されん・・・梅の髪飾りを1本、盗まれたと言っていた」
「あれは祖父が誕生日に特別に注文したものだと言ってた。貴殿、名は?」
「サカノウエ・ジュゲン」
「容疑者は絞られている。必要なのは証拠だ」
「犯人は・・・その特注品の髪飾りを持っている・・・?」
「おそらく・・・暦上、明日あたりが出没のはずだ」
「あなや。襲われたのは女児ばかり・・・しかも髪飾りが無くなる」
「初耳だ。許せんな・・・樹玄、お前、女装をしろ」
「・・・は?」
「イヤか。よし、幻を練る」
「・・・ん?」
通り魔が出るであろう場所に、女装した樹玄の姿。
そこに、一見可憐に見える美女が通りかかった。
「こちらには通り魔が出るとか。危ないおあすよ」
無言で小さく何度もうなずく樹玄。
小袖で口元を隠している。
美女が「その髪飾りをどこで買ったの?」と聞いて来た。
かぶりを小さく振る樹玄。
「ちょうだい?」
美女は袖に隠し持ったナタを勢いよく横に払った。
樹玄はそれを咄嗟に避ける。
女が犯人で間違いはなさそうで、同行した退治官の黒服達が物陰から矢を射った。
正確に的を得た矢。
最終的に後頭に刺さった矢で、女は前方に倒れた。
絶命している。
「ずっと探していた、別名「かまきり」ですね・・・協力感謝します」
退治官たちがあとは処理をしてくれるらしく、ふたりは地蔵に干し柿を供えた。
そこに「ありがとう」と可愛らしい声がした。
「見えたか?」
「いや、ありがとう、と聞こえた」
「うん」
「貴殿のおかげなりよ」
「まぁいいさ」
のちに退治官たちから報告があった。
かまきりと呼ばれたその女の家から、紛失した髪飾りが出てきた、と。
――
――――・・・
数日後、蜜秀の家を訪ねて来る樹玄は『筑前煮』を持参していた。
「どうした」
「・・・また見えて来た!!」
蜜秀は呆れたようにため息を吐いた。
「まぁ、あがれ」




