44 宰相との対話 銀灰妃目線
ゼフが叔父を殺したと聞いたとき、わたしと王子たちは事故だからと許した。
上の者が事故と言えば事故だ。
わたしは宰相を見た。逃げ場を与えないように、まっすぐに。
「わたしの家族が狼に食い殺されたときも事故で処理されましたね」とわたしは言った。
「あなたの手紙でまんまとおびき寄せられた」
「いえ、それは……」
「ほんとうに王宮は怖い所です。平気で嘘を言う。いや、嘘のつもりはないのですね。それともついた嘘を忘れるほど馬鹿なのですか?」とわたしは続けた。
宰相はわずかに言葉を濁す。
表情に罪悪感でもあるの?
「いや、どうでしょうか?銀灰妃殿下」と宰相は言った。
「ネズミでしたよね。最初の呼び名は」とわたしは言った。
あの頃、わたしに与えられていた呼び名。
軽く、汚く、踏み潰しても構わない存在。
「いや、それは……」と宰相は言う。
「わたしの最初の侍女の名前を憶えていますか?」とわたしは聞いた。
「それは?」と宰相は言う。
「覚えていないでしょうね。ただ、あなたは彼女たちの話を信用して約束していた家庭教師を辞めさせましたね」とわたしは言った。
あのときの理不尽。
今でもはっきりと覚えている。
「それは?」と宰相は繰り返す。
「ネズミにした約束など覚えていられないですよね。今はそれがよくわかりますよ。だけどあのころは恨みました」とわたしは言った。
あの頃のわたしは愚かだった。
約束が守られると信じていた。
だが今は違う。
この場所の本質を、もう理解している。
「侍女の一人パトリシアはサンダース家の手の者でしたね。アレクを殺そうとして、失敗してサンダース家に逃げ込みました。それからマイクを殺そうとして逆に殺されましたね」とわたしは言った。
事実を並べるだけでいい。
それだけで、この男はおびえた顔をする。なんとも面白い。
「もう一人はジョシー。王妃に殺されかけた彼女をあなたが助けた。ウィリアムもあなたが助けたことになるのでしょうかね」とわたしは続ける。
助けたつもりなのだろう。
だがその結果、何が残った?
「だけど、ジョシー親子はまったく厄介なことをしてくれました」とわたしは言った。
王宮はいつもそうだ。
善意も悪意も、すべてが歪む。
「まぁ、運命は不義の子を成敗しましたがね。陛下の名誉を汚してくれました」とわたしは言う。
運命?違う。
それは積み重ねた結果だ。
わたしは立ち上がった。
椅子の軋む音が静かに響く。
そして宰相を見下ろす。
「銀灰妃として、お願いしたいことがあります。サンダース家を消してちょうだい。宰相の力で」とわたしは言った。
これはお願いではない。
命令でもない。
わたしの希望だ。おもしろいことに今ではこれが最優先事項になっている。
「わたしの家族を殺した。アレクを殺そうとした。マイクも。叔父の死もあいつの計画に決まってる。確かに叔父は褒められた人間じゃないけど、わたしの身内。国王とあなた。協力しあって。できるだけ長引かせて、始末して」とわたしは言った。
すぐに殺す必要はない。
じわじわと、逃げ場を奪いながら終わらせればいい。
その方が、怨念が喜ぶ。わたしも嬉しい。
宰相は何も言えず、ただわたしを見上げている。
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