025 逃亡
今話より、今まで誰の目線だったか分かる様に付けていたマーク(♠/♥/♤/❡等)を省く事にしました
他の人の目線で書く時にマークでネタバレする危険大と...(^^;
これまでの投稿分はそのまま残すつもりですが、何かの切っ掛けで省くかも知れません
よろしくお願いします
「あら?ミーアじゃないの?いつの間に...」
「...みゃ~」
ふとシャイニーがラバの方を見ると、メーラの背に白い模様が。あの白猫だ。
これまでもこの白猫は休憩時間のラバたちが落ち着いている間を狙ってか、何度も姿を見せていた。あれ以来エスピーヌが牧場に顔を出していないので、この猫が今何を考えているのかは分からない。出来れば駄ラバが何を考えているのかを知りたいところだが、エスピーヌは仕事なので仕方ない。あ、今日はアガペーネのヤケ酒の相手か。ま、頑張って欲しい。
「さあて、休憩終わり!今日ラストの訓練、頑張って落とされないようにするぞ!」
「...ルー君、頑張って!」
大人しいラバを問題なく乗り回すシャイニーと、体力のある限り暴れ続ける駄ラバから落とされないようになった俺と、どっちが上手いのか分からないいが、普通に旅をするのが目標の俺たちとしては、何とかしてこの駄ラバを落ち着かせるのが目標となっている。本当に余分な仕事だ。
シャイニーにエールを送られ、駄ラバに乗ろうとした時、白猫がメーラからスタッとミールに乗り移った。
「珍しいな、こっちのラバに乗るのもそうだけど、これから乗馬の練習をしようとしてるのに乗ってくるなんて。しかもこっちは暴れラバ。振り落とされても知らないぞ?」
「...みゃ~~」ぺし
...何だ?こいつ。さっさと乗れってか?駄ラバの上でこっちを見る猫。その様子を見ていたシャイニーやサフランも目を丸くする。
知らないぞ?こいつ、タイミング悪いと乗る時から暴れるから。 ...よし、今だ。
鞍に足を掛けて一気に跨がると、それに気付いた駄ラバが首をもたげた。く、来るぞ!俺は暴れだそうとする駄ラバに備えて、いつものようにサッと戦闘態勢を取る...が、駄ラバはいつものようには暴れなかった。いや、正確には暴れようとしても止められたのだ。
「ヴェ~~~ン」「みゃ~」ぺし
「ヴェ~~」「みゃっ」ぺしぺし
「...ヴェ」べしべしべしっ!「み゛ゃっ!」
「...なぁ、シャイニーちゃん。あれ、何だと思う?」
「...さぁ。でもミールが大人しくルー君の言う事を聞いてる?」
「いや、トゥルース君の、というよりは、あの白猫の言う事を聞いている様に見えるんだが...」
柵の中に乗って来た馬を入れて並走していたサフランが、メーラに乗るシャイニーとコソコソと話しているが、全部聞こえてるんだけどっ!
でもまぁ、俺も拍子抜けだ。さっきまでの苦労が嘘の様に、思いのままにコントロール出来る。これまでロデオよろしく跳び跳ねるラバから落とされないように乗っていたので、それに比べたら普通に走らせるのは何も難しくはない。こうして普通に走ってくれれば、であるが。
常歩、速歩、駈歩と問題なく乗れてしまった俺を見たサフランが、ラバたちの足を止めさせて提案してきた。
「これから少し、牧場の外に出てみるか?二人ともそれだけ乗れれば問題無いだろう」
いずれは外に出ていく俺たち。こちらの駄ラバさえ大人しくなれば、練度としては二人とももう及第点という事だろう。
...いずれはって、いつまでいるつもりだよ。本当は直ぐにでも出発したいんだけどな。そんな事を思いながら、牧場の門まで調教師のおじさんたちに牽かれて移動する。先ずは牽かれながら慣らす算段だ。本当は荷物も積んだ状態で慣らしたかったけど、ああも暴れられては荷物を載せる事も出来なかったからな。
そして、さあ門から出ようとした時、やはり駄ラバが騒ぎ出した。
「ヴェ、ヴェ~~~ン」「みゃ~」べしっ!
「ヴェ...」べしべしべしっ!「み゛ゃっ!ふにゃっ!!」
「ヴェ~~ン」「みゃ~」ぺしぺし
...ナンダコレ?
目の前で起こった寸劇(?)に、俺だけでなくサフランやシャイニー、調教師のおじさんたちも目を丸くする。猫ってラバと喋れるんだ。って、何を馬鹿な事。兎に角、俺はこの駄ラバを今後も乗り続けなくてはならない。歩を止めているこのミールに引っ張られるように、前を歩いていたシャイニーの乗るメーラも足を止めてこちらを見ている。そう、この二頭は一緒でないと動かないのだから、俺がこのミールを手懐けないといつまで経ってもこの牧場を出立出来ない。もしくは諦めて別の馬やロバにするかだが、あれ程この二頭に拘った彼女だ、たぶんシャイニーがそれを良しとしないだろう。だからこうして何日もこの駄ラバに付き合っているのだが...この猫のお陰で先に進めそうだと淡い期待を持ってしまう。
「よし、じゃあこのまま進むぞ?良いな?シャイニーちゃん、トゥルース君」
「ええ」「はい」
ゆっくりと歩き出すサフランの乗る馬に付いて進み出す2頭のラバ。
おお、良い感じだぞ?これ。時々ぺし、ぺしっと白猫が駄ラバを叩いているのが気になるが。少し進んだところでサフランがラバを先行させて後ろに付く。するとシャイニーの乗る白ラバを先頭にゆったりと馬群が進む。何かあればサフランが馬を駆けさせて鎮めてくれるだろうが、そんな危うさは今のところ感じない。
「ほう...これなら明日からは荷物を積んでの練習に入れるかな?」
サフランが感心したように呟くのが聞こえてきた。
うん、これなら旅が出来そうな感じだ。白猫のぺしぺしが気になってたけど、漸くそれも今は落ち着いているし。そして試しにと、メーラの後ろではなく横に付けて並走させる。確か横並びの二頭引き馬車を牽かそうとすると歩調が合わず上手く進めなかったんだよな。そんな話を思い出しての並走だったが、それも難なく熟している。
...これ、行けるんじゃね?そう思っていた時だった。
「みゃ~~~」
立ち上がったミーアが、トンとメーラの方へと飛び移る。突然目の前に現れた白い塊に一瞬驚いたシャイニーだったが、みゃ~とひと鳴きしたミーアにニッコリと微笑む。しかし...
...絵になるなぁ、と俺が思って見惚れていた矢先だった。ミールが何やらひっぐひっぐと声にならない鳴き方をしたかと思ったら、突然ヴェ~~~ンといつもの鳴き声を発し、両前足を持ち上げた。お?ああ?
「どわっ!!」
突如暴れ出したミールに放り出された俺。
頭を打つ事は無かったが、突然の出来事に俺は対処できなかった。マジかっ!!
駄ラバはと言えば、その場で調教師も早々に諦める程暴れた後、逃亡。
そして呆気に取られる俺たち。駄目だコリャ。




