やきいも
大変お久しぶりです(_ _)
気長〜にお付き合いいただければ幸いです(^^)
落ち葉で。
「……あれ、梅田さんじゃね?」
「え? ほんとだ――」
四時間目の授業終了後、体育で校庭に出ていた平太と明良は、校庭の隅の方で落ち葉を箒で掃いている初枝を見つけた。
「掃除でもしてんのかな」
「……そのわりには落ち葉の山作ってね?」
と平太は保育ルームの近くにこんもりと小さな山になっている落ち葉を見て言う。
その間も初枝はせっせと落ち葉を掃いて、その山に集めている。
なんとなく気になった二人は、初枝に近付いて声をかけた。
「――梅田さん、何してるんですか?」
「え……? あら、驚かそうと思ってたんだけど……」
「見られちゃったわね……」と初枝は困ったように笑って続ける。
「昨日ご近所さんからさつまいもを貰ったのね。だから、今日の放課後に焼き芋でもしようかと思って、落ち葉を集めてたの」
と初枝は山になっている落ち葉に顔を向けてから、二人に顔を戻した。
それから思いついたように、初枝は口を開いた。
「そうだ、明良くんもよかったら一緒に焼き芋食べない?」
「え、いいんですか?」
「もちろんよ。子どもたちも喜ぶだろうし」
と初枝は微笑む。
それからはっとしたように二人に言う。
「そういえば、時間大丈夫? お昼の時間よね?」
「あぁ、大丈夫ですよ、ささっと食べるんで」
平太が答えると、初枝は少し眉間に皺を寄せて続けた。
「それは身体に悪いわ。ちゃんとよく噛んで食べなきゃ。ほら、二人とも早く教室戻って、しっかり食べるのよ――」
と二人を校舎の方に向けると、背中を軽く押す。
それからにっこり微笑むと、二人に言った。
「はい、じゃあまた後でね。美味しい焼き芋作りましょ」
「はい、また後で」
「はい――」
にっこり微笑む初枝に軽く頭を下げて、二人は教室に戻るのだった。
*
そして放課後。二人は保育ルームに来ていた。
だが、室内は思ったよりも静かで、明良は「こんな静かだったっけ?」と首を傾げた。
「なんか、静かだな」
「隣の部屋で寝てるんだろ? ほら――」
平太に言われて隣の部屋を覗くと、すやすやと子どもたちは寝ていた。
「ほんとだ。……じゃあ梅田さんは?」
と明良が振り返ると、上着を羽織った初枝がちょうど部屋に入ってきて「来たのね」と微笑む。
「ナイスタイミングね。子どもたちが寝てる間に、さつまいもを外で焼いてたの。ほんとは二人にも手伝ってもらおうかと思ってたんだけど、時間掛かるから先に焼いちゃった――今は火を消して、葉っぱで熱を閉じ込めてるんだけど、子どもたちが起きたら食べましょうか」
「楽しみね」とにっこり笑う初枝に、平太が気になったことを訊いた。
「一人で焼いてたんですか?」
「さすがに一人じゃないわ。ちょうど用務員さんも校庭を掃いてたから、良かったら落ち葉貰えませんかって声掛けて、さつまいも焼くんですって言ったら手伝ってくれてね。そのお礼に焼き芋二本渡したわ」
「寝てる子どもたちの様子も見ないといけないから、助かったわ」と初枝は答えて、手を合わせる。
「なるほど。じゃあもう食べるだけなんですね、何か手伝えたら良かったんですけど……」
「いいのよ、気持ちだけで十分だわ。それに二人は勉強とかで大変でしょ――」
たまには休憩しなきゃ、と初枝は二人を見て微笑んだ。
話し声で起きたのか、隣の部屋から子どもたちが目を擦りながらやってきた。
「おはよー……? 明良だ!」
と辰が明良を見て、ぱっと顔を明るくする。
「きょうは明良もいるんだ、うれしい」
「ひさしぶり、明良お兄ちゃん!」
「ひさしぶり……!」
続いて薫と彩、杏も明良を見上げてにっこりした。
笑顔が眩しいぜ……と思いながら、明良は集まってきた皆の頭を撫でる。
「久しぶり、皆元気そうだね」
『うん!』
と四人は明良に答える。
それから初枝が視線を集めるように手を叩いた。
「はい、皆起きたわね――今日のおやつは焼き芋よ。もう少ししたら、皆で外に行きましょう」
初枝の言葉に『やきいも……!』と子どもたちは目を輝かせる。
「あきといえば、だね」
「やたいのやつ?」
杏と彩が初枝を見上げると、初枝は腰に両手を当てると、胸を張って「ふふん」と大袈裟に答えた。
「なんと……、私と用務員さんが焼きました!」
「せんせースゲー!」
「やけどしなかった?」
素直に驚く辰と心配する薫に「ふふふ、大丈夫よ」と笑って答える。
それから子どもたちに向かって、初枝は続けた。
「それじゃ、皆上着羽織って行きましょう。そんなに寒くはないと思うけど、一応念の為ね」
『はーい』
と子どもたちは頷いて、皆自分の上着を羽織り、準備をする。
平太と明良にも「行きましょうか」と初枝は声を掛け、皆で外に向かった。
初枝が先導するように歩いて、保育ルームの近くにやってきた。
落ち葉が山のようになって、所々焦げている。
初枝は準備しておいた軍手を皆に渡し、平太と明良に声を掛けた。
「じゃ、これから取り出すけど、二人も手伝ってくれる?」
「もちろんですよ」
「子どもたちに渡せばいいんですよね」
「そうそう」と初枝は笑って、長めのトングで落ち葉の山を崩していく。
その中から、平太と明良はアルミホイルで包まれているさつまいもを拾い上げ、軽く払っていく。
子どもたちは、それを後ろから見て『おー!』と感嘆の声を上げた。
「熱いから、気をつけて食べるんだぞ――」
そう言って、平太が辰と薫に焼き芋を半分に折って渡す。
彩と杏も明良から半分に折ってもらったのを受け取って「あったかい」と呟いた。
断面からほわほわと温かい湯気が上がり、焼き芋の香りが鼻をくすぐる。
「いいにおいだな!」
「やさしいにおいがする」
「ほくほくしてる!」
「あまいかな?」
子どもたちは焼き芋に息を吹きかけながら、冷ましていく。
平太と明良も焼き芋を半分にして、ふーっと冷ます。
初枝もふぅふぅと息を吹きかけながら、いただきますと呟いた。
それに続いて、皆もいただきますと声に出してから、焼き芋を一口齧る。
「……ん、うま」
「ほくほくだ、甘いし――」
と平太と明良は「久々に食ったわ」と思わず綻んだ。
子どもたちも頬を赤くさせながら、「おいしい」や「うまい」と口から感想を洩らす。
食べながら、初枝は皆の様子を見て、やって良かったと微笑んだ。
「平太ー、おかわり!」
もう食べ終わったのか、辰が平太にねだる。
平太は「よく噛んで食えよ?」と注意しながら、半分をまた辰に渡した。
「おー、まかせろ!」
と辰はにこにこ笑って、また焼き芋にかぶりつく。
「……ん、うめー!」
「怪獣かよ――」
豪快にかぶりつく辰に、平太はツッコんで笑った。
するとおずおずと薫もやって来て、明良に訊いた。
「ぼくも、たべていい……?」
「いいよ、はい――」
明良から半分もらって、薫はありがとうと言ってから、控えめにぱくりと焼き芋にかぶりつく。
「ん……、おいしい」
ほんわかと薫は笑って、もぐもぐと口を動かす。
彩と杏も初枝からおかわりを貰って、美味しそうに焼き芋を食べていた。
「秋を堪能出来たかしら――?」
初枝が満足そうな顔をする皆を見渡して訊く。
「できた!」
「おいしかった……!」
「やたいとは、またちがったおいしさだった!」
「あきのみかく、だね……!」
と四人はにっこり笑って答えた。
平太と明良も「美味しかったです」と答えて笑う。
「ふふ、なら良かった――じゃ、皆で最後は片付けするわよ」
と初枝はゴミ袋を掲げて見せた。
辰と彩が「えー」と不満の声をあげる。
それに続いて薫と杏が「たべたら、かたすんだよ」「ちゃんとキレイにしなきゃ」と二人に言うので、渋々二人は頷いた。
「平太くんと明良くんも、片付け手伝ってね」
「はい」
「もちろんですよ――」
と二人は頷いて、ゴミ袋に落ち葉を入れていく。
子どもたちも、せっせと落ち葉を両手いっぱいに持って捨てていく。
最後の仕上げとして、初枝が箒で掃いてちりとりに入れていく。
そして子どもたちが開いてくれたゴミ袋に、ちりとりに入っている落ち葉を入れた。
「――よし、完璧ね」
『おわったー』
「意外と早く終わったな」
「確かに」
両手を払いながら、平太と明良は顔を見合わせる。
子どもたちも両手を払いながら、「ふぅ……」と息を吐いた。
「じゃ、平太くんと明良くんは子どもたちと先に部屋戻ってて。私はこれ置いてくるから」
と初枝はゴミ袋を持って見せる。
平太と明良は「大丈夫ですか?」と口を開いた。
「案外重いですよね」
「俺たちが持ってきますよ」
「大丈夫よ、私意外と力持ちなの――ね?」
と初枝はゴミ袋を掲げて見せる。
「すぐ戻るから、部屋入ったら手洗いうがい忘れずにね」
「わかりました」
「ありがとうございます――」
二人に子どもたちを預けて、部屋に戻って行く子どもたちと二人を見送って、初枝はゴミ捨て場に向かうのだった。
ゴミ捨て場に行くと、さっき焼くのを手伝ってくれた用務員さんが出てきた。
「あ……、さっきはありがとうございました、無事終わりました」
初枝が頭を下げると、用務員さんは「いやいや」と両手を振って続ける。
「上手くいったなら良かった。こちらこそ焼き芋を貰ってしまって……。ありがとうございました。美味しかったです」
「いえいえ、なら良かったです――」
「それでは」と、用務員さんは微笑んで少し頭を下げてから、その場を後にした。
初枝も「はい」と軽く会釈して、ゴミ袋を捨てる。
「よし……、これで大丈夫ね。さ、早く戻りましょ――」
と初枝もゴミ捨て場を後にした。
保育ルームに向かいながら、ふと皆の笑顔を思い出して、初枝は一人微笑むのだった――
初枝が保育ルームに戻ると。
平太「手洗いうがいやって、お茶いれておきました。飲みますか?」
明良「身体あったまりますよ」
辰「うまいぞ!」薫「おいしい」彩「おちつくよ!」杏「あったかいよ…!」
初枝「まあ、ふふ。いただこうかしらね(微笑み)」




