ゆうひ
お久しぶりです(_ _)
秋、息抜きに校庭へ――。
ハロウィンが終わり、またほのぼのとした日常が戻りつつも、平太も勉強に精を出している。
保育ルームの子どもたちも、最近はテーブルで勉強をする平太の周りに集まって、一緒に勉強をするようになっていた。
勉強といっても、絵本を広げて静かに読んでいるだけなのだが――。
「……はぁ、休憩しよ」
背筋を伸ばして周りを見てみると、さっきまで周りで本を読んでいたはずの子どもたちがいなくなっていた。
「え? ……どこいった――?!」
焦って立ち上がると、近くに置いてあったのか、一枚の紙がふわりと下に落ちる。
そっと拾い上げてみると、初枝が書いたであろう文字がそこにあった。
『平太くんが集中してるので、子どもたちと外に散歩してくるわね。校庭の隅を歩いてるから、平太くんももし良かったら、休憩がてら来てね』
「……気を遣わせてしまった」
申し訳ない……と思いながら紙をテーブルに置き、ふと窓の外に目を向けると、確かに初枝と子どもたちの姿があった。
落ち葉を踏んではしゃぐ辰と、静かに落ち葉を見つめる薫、彩と杏は落ち葉を拾っては吟味し、綺麗な落ち葉を探しているようだ。
「……俺も行くか――」
休憩も大事だしな、と平太も校庭に向かうのだった。
平太が合流すると、初枝が「来たのね」と微笑む。
「平太くんお疲れ様。ここに来たってことは休憩よね?」
「はい、気を遣わせてしまったみたいで、すいません」
平太が頭を下げると、初枝は気にしないでいいのよ、と手を振って続けた。
「それより、ちゃんと外の空気吸ってる? 外の空気を吸うことも、大事だと思うの――」
と初枝は深呼吸してみせる。平太もマネて深呼吸する。
なんだかんだ、久しぶりに深呼吸した気がする、と思いつつ、何となくリラックス出来た気がした。
合流するまでも、久しぶりにゆっくり景色を見た気がする。
木に付いている葉っぱは黄色や赤に色づき、校庭を秋色に染めている。
時の流れを、嫌でも感じる。これからもっと、速く感じるのだろう――。
「……秋ですね」
「そうね――」
二人でまったりと色づいた葉っぱを眺めていると、彩と杏が葉っぱを数枚手に持ってやってきた。
「平太お兄ちゃん、みてみて!」
「きれいなの、あつめたの……!」
彩の手には、イチョウの葉っぱ。杏の手にはモミジの葉っぱが握られている。
たしかに、どちらの葉っぱも汚れや色のくすみもなく、満遍なく一色の葉っぱだった。
「すごいな、ほんとに綺麗だ――」
「でしょでしょ?」
「げんせん、したんだよ……!」
「そうかそうか、じゃあ二人は綺麗なものを見つける天才だ」
そう平太がにっと笑うと、二人も嬉しそうに笑う。
それから二人は、それを平太に差し出した。
「「はい、あげる!」」
「え、いいのか?」
「うん。平太お兄ちゃんがんばってるから、きれいなのみて、いやされてほしくて」
「いやされてね……!」
えへへ、と照れたように笑う二人の頭をそっと撫でて、平太も笑う。
「……ありがとな、大切にするよ」
「うん!」
「うん……!」
三人がほのぼのとした会話をしていると、辰と薫もやってきて「これやるー!」と彩や杏と同じように葉っぱを平太に差し出した。
……葉っぱといっても、大きさがだいぶ違っている。
「でっか、なんだこれ?」
「わかんないけど、おもしろそうだから、もってきた」
そう言う薫も、顔と同じくらいの葉っぱを目と口の所に穴を開けて、仮面のように顔に当ててみせた。
「すごいな、どっかの部族みたいな……」
「どうだ、かっこいーだろー!」
と辰も葉っぱを顔の前にもってきて、ドヤ顔をしてみせる。
「かっこいいというよりは……、怖いんじゃないか?」
「「えっ――」」
すると辰と薫が驚いた顔をして固まるので、平太が「どうした?」と不思議がっていると、二人の視線は後ろに向いていた。
恐る恐る平太が振り返ると、そこには辰や薫と同様に葉っぱの仮面を手に持つ初枝がいた。
「……梅田さん?」
「みんな、葉っぱ星人にしちゃうぞ〜! ……驚いた?」
「えっ、と……、はい……」
予想外で驚きました、と平太が苦笑しながら子どもたちを見ると、彩と杏は大丈夫みたいだが、辰と薫は平太の後ろに隠れていた。
「……せんせー?」
「そうよ――、ほら」
辰の不安そうな声に初枝が葉っぱをどかすと、二人はほっとしたように平太の後ろから出る。
「べつじんかとおもった……」
「ふふふ、騙されてくれたみたいで、嬉しいわ。さ、そろそろ陽も傾いてきたし、保育ルームに戻りましょうか――」
そう言って初枝は子どもたちを保育ルームのほうへ促す。
平太も子どもたちの後に続いた。
ふと視線を空に向けると、真っ赤な夕陽がそこにあった。
「……眩しい……」
「ん? あ、ほんとだ、ゆうひすげー」
ふいに平太の口から洩れた呟きに、辰が気づいて立ち止まり、他の三人も立ち止まる。
「まんまるで、おっきいね」
と薫も眩しそうに目を細めた。
すると彩が思い出したように手を挙げる。
「あ! あたし、なんでゆうひがあかいのか、しってる!」
「そうなの? どうして……?」
杏の問いに、彩は「それはねー!」と自信たっぷりに答えた。
「こうやって、みんながみてくれるようにだよ!」
ふふんと胸を張る彩に、平太は疑問をぶつけていた。
「……なんで、見てくれるようになんだ?」
「まいにち、ここにいるんだよー! がんばってるんだぞー! って、しってほしいから。だから、ゆうひはあかいんだよ――」
思わぬ返答に、平太は「そっか」と微笑む。
「……頑張ってるの、知ってほしいもんな」
「平太お兄ちゃんは、がんばってるよ……!」
と杏が平太を見上げて言った。
平太はきょとんと杏を見る。
「え……?」
「まいにちがんばってるの、しってる」
「おれたちが、ちゃんとみてるぞ!」
と薫と辰も笑って言う。
何となく応援された気がして、平太も「あぁ……」と微笑んだ。
「頑張るよ」
「無理はしちゃダメだからね」
「はい――」
優しく微笑む初枝に頷いて、平太はまた夕陽を見る。
夕陽は変わらず真っ赤で、眩しく感じる。それでも、さっきの眩しさより、和らいでいる気がする平太なのだった――
平太「てっきり、みんなに見つめられて、照れてるから赤いんだって言うのかと思ったな」




