おかっぱと口裂け
お久しぶりです…!
高校最後の文化祭、始まります。
着々と文化祭の準備は進み、気付けば当日──。
平太と明良はお化けの軽く血が流れているように見えるメイクをしていた。
「どんだけ塗ればいいんだ……?」
と明良は真っ赤な口紅を、口からはみ出して塗っている。はみ出して塗っている理由は、明良がやるのが口裂け女だからだ──。
「いや、それやり過ぎじゃね?」
と平太は少し引き攣り笑いをしながら、おかっぱのカツラを頭に被る。
普通のお化け屋敷じゃつまらないから……という理由で、平太はトイレの花子さんをやることになっている──。
「んー、すげえおかっぱ」
「ははっ、確かに」
鏡を見ながらカツラを被った平太に、明良は真っ赤な口を開いて笑う。
「いや、お前も相当ヤバいからな?」
「えー? 普通よ、ふ、つ、う」
と明良は役になりきっているのか、うふんと唇を尖らせて見せた。
平太は引きながら「いや普通じゃねえ」と苦笑いする。
「はいはい、二人とも衣装忘れないでね──伊川くんは白のワンピースと、マスク。松城くんは赤のスカートね。長めだから、下に短パン穿いても見えないからね」
と一人の女子生徒が二人に衣装を手渡して、着替えてねと言って他の人にも衣装を配っていく。
二人はお礼を言ってから受け取り、それに着替えた。
「おー……。っぽい!」
「ぽい!」
と二人はお互いの全身を見て口を揃える。
「俺完成度高いわ。私……綺麗……? あ、カツラ忘れてた。借りてくる──」
なりきった明良がふいに素に戻り、自分の頭を触ってから、長髪のカツラを借りに行った。
何で忘れるんだよと平太は笑いながら、そういえば花子さんの決めゼリフってなくね……?と思いだし、脅かすときどうしよう……と少し悩むのだった。
*
平太たちが準備をしていた頃、保育ルームでは初枝も子どもたちと準備をしていた。
「皆準備いい?」
初枝の問い掛けに、それぞれ「はーい」と手を上げて口を揃える。
「かんぺきだぞ!」と辰。
「だいじょうぶ」と薫。
「いつでもいけるよ!」と彩。
「わたしも……!」と杏。
初枝は頷いて、じゃあ行こうかしらねと笑って、皆の背中を軽く押した──。
*
平太のクラスに向かうと、数名の生徒が並んでいた。
「平太のとこ、にんきなんだな!」
「ならんでるもんね」
と辰と薫が見渡して言う。
彩と杏もそわそわと出入口に視線を向けていた。
「平太お兄ちゃんいつでてくるかな?」
「もうちょっとしたら?」
彩と杏に訊かれ、初枝は「そうねぇ」と口元に手を当てて答える。
「たぶん中で頑張ってるだろうから、ちょっと待ちましょうか。休憩時間聞いてくるわね──」
子どもたちに「待っててね」と言って、初枝は前のドアで受付をする女子生徒に声を掛けた。
「ちょっといいかしら」
「あ、梅田先生。何ですか?」
「平太くんと明良くんに用があるんだけど、休憩時間っていつかわかる?」
初枝が訊くと、女子生徒は腕時計を確認して答える。
「もうこれで午前中は終わりなので、そろそろだと思います」
「そう、わかったわ。ありがとう──」
初枝は笑って子どもたちの元に戻った。
「もうちょっとしたら会えるわよ」
「ほんと?! これで平太のおばけすがたがみられるんだな!」
「どんなやくかな」
「カッコイイおばけだったりして?」
「どうだろうね……!」
それぞれがわくわくとした面持ちで待っていると、後ろのドアが開いて生徒たちが出てくる。
それからおかっぱ頭で赤いスカートを穿いた男子生徒が「午前の部は終了しました~、また午後からよろしくお願いしまーす」と言って、午後の開始時間を書いたボードをドアに掛けた。
「はあぁぁ……疲れた──あ」
とボードをドアに掛けた男子生徒は、振り返って固まった。
そこには笑いを堪える初枝と、ププッと今にも噴き出しそうになっている子どもたちが見詰めていたからだ──。
「ふ、平太なにしてんだ?」
「おんなのこ……ぷっ……」
「うふふ、かわいいよ……っ!」
「いがいと、にあってるよ……!」
と子どもたちに言われ、平太はこれは褒められてるのか?と思いつつ、子どもたちと向き合った。
「平太くんの……それは何役?」
「トイレの花子さんらしいです……」
「そうなのね……。ふふ、似合ってるわ」
と初枝も笑うので、これは褒めてないなと平太は苦笑いになる。
「いや……、俺ももうちょっと怖い役かと思ってたんですけどね──」
と子どもたちを見るとまだ笑っているので、笑いすぎじゃね?と平太は皆の頭をぽんとする。
「いや、お前ら笑いすぎな……? でもあれだぞ? 明良のは完成度高いからな──」
その声に応えるように、後ろのドアがゆっくりと開かれた。
そこに長髪のカツラでマスクを付け、白いワンピースに身を包んだ明良が姿を見せた。
「ワタシ、キレイ……?」
ぽそりと呟いた問い掛けに、子どもたちは顔を見合わせてから頷く。
『うん、きれい』
「ソウ……。コレデモォォォオオオオ……?!」
と明良はマスクを取って歪に笑って見せる。
ニヤリと、不自然に書いた唇が大きく広がった。
『っうわああああああああああ』
一瞬にして子どもたちの顔が恐怖に変わった。
「えっ、いやごめんごめん、俺だよ、明良だよ──ほら」
と明良がカツラを取って安心させようとすると、それが余計に怖かったのか、子どもたちは口を揃えて言った。
『と、とれたあああああ、わああああああ──』
「え、ちょっと待ってちょっと待って、カツラだから、これ!」
おろおろと明良が弁解しようにも、子どもたちに明良の声はもう届いていない。
「う、梅田さん、どうすれば……!」
「うふふ、大丈夫よ、明日には忘れてるから」
「ドンマイ、明良」
と二人が苦笑いで言うので、明良は今日は諦めろってことか……!?と、わーわーと小さく悲鳴を上げる子どもたちを見て、もうちょっと普通に出ればよかった……と後悔するのだった……。
その後明良は、口紅を落としたのを見せて、子どもたちにわかってもらいました──
明良「あんな叫ばれるとは……」




