気になるのは
お久しぶりです。
夏休みが開けて──
長いようで短かった夏休みも終わり、高校最後の文化祭に向け、勉強にも力を入れつつ、平太と明良のクラスも動き出していた──。
「松城くん、ちょっといい?」
「委員長……、何でしょう……」
実行委員長に呼ばれて平太が恐る恐る伺うと、委員長が本題を口にする。
「去年もだけど、今年も保育ルームの皆と過ごしたいとか思ってるんでしょ? 最後だし──」
と去年も同じクラスだった委員長が、わかってるんだからねと言いたげな顔で平太を見た。
「あ、うん……」
「なら……今年もしっかり、内装よろしくね」
「え、いいの?」
と平太がきょとんとするので、委員長は「はぁ……」と一つ息を吐いて続けた。
「いいもなにも……、最後なんだから当たり前でしょ。最後行かせなかったら、子どもたちが可哀想でしょうが」
「お、おお、ありがとうございます!」
「わかったら材料買い出しお願いね──」
「ぅ……はい──!」
一瞬渋ったが、委員長の目が鋭くなったので、平太はそそくさと買い出しに行くのだった……。
*
「失礼しまーす……」
「あら、平太くんって……凄い疲れてるわね」
「ちょっと、色々こき使われて……」
と平太は疲れた顔で初枝に答えて椅子に座る。
普段なら子どもたちがやってくるが、今日はなんだか静かだった。
「皆寝てるんですか……?」
「うん。ちょっとね。あと少ししたら起こすの」
「そうなんですね。じゃあ俺が後で起こします」
「そう? じゃあ、お願いね──。そういえば、今年も文化祭の時期なのね、生徒たちが準備してたわ。平太くんのクラスは何をするの?」
と初枝も斜め前の席に座って訊く。
平太は少し考えてから答えた。
「えーと、お化け屋敷ですね」
「へえ、お化け屋敷。平太くんもお化けやるの?」
「そう、ですね。一般公開の日は皆と回れそうなので、学校だけの時はお化けやってます」
「そうなの? それは楽しみだわ」
と初枝はふふふと笑う。
「じゃあ、初日は皆で行くわね。二日目は皆で回りましょ」
「初日来るんですか?!」
「あら、だめ?」
「だめっていうか……」
子どもたちに避けられるのが嫌だと平太は思うが、それを初枝に知られるのも少し恥ずかしい……と平太は口ごもった。
そんな平太に、初枝は手を合わせて言う。
「いいじゃない、きっと皆お化けの平太くん見たいって、きかないんじゃない?」
「……それはあり得る……」
嬉しいような見られたくないような、複雑な気持ちになりながら、平太はうなだれる。
「きっと大丈夫よ、皆ちょっと驚く位だろうし、次の日にはいつもの平太くんなんだから」
「ですかね……ならいいんですけど……」
「うふふ。大丈夫よ、楽しみにしてるわね──さ、そろそろ起こしてきてもらえる?」
「……はい。行ってきます──」
と平太はゆっくり立ち上がって、皆が寝ている隣の部屋に向かった。
隣の部屋に入ると、すやすやと気持ちよさそうに四人が寝ていた。
腕を頭上に伸ばす辰と、その隣で真っ直ぐ寝ている薫。
杏と彩は途中まで話をしていたのか、お互い向かい合うように横を向いていた。
平太は静かに近くに行くと、声を掛けながら揺らしていく。
「はーい、起きる時間ですよー、起きてくださーい」
と辰、薫、彩、杏の順で揺らしていく。
四人はうんうんと小さく唸りながら、もぞもぞと動く。
「おらー、起きろー、じ、か、ん、だ!」
平太が一層声を張ると、薫と杏、続いて彩が起きた。
「平太、うるさい……」
「うん、うるさい……」
「しずかにしてよぉ……」
「う、なんか刺さるな……。はいはい、最後は辰か。おら、起きろ辰」
肩を少し乱暴に揺さぶると、辰がハッとして起き上がった。
「っはっ!」
「うお、どうした」
「か、かいじゅうが、せめてきた……」
「うん、夢だ、良かったな」
と平太は軽く流そうとしたが、辰の次の言葉に平太は興味を抱いてしまった。
「せんせーだった……」
「……は?」
「くちから、ひ、ふいてた」
「せんせーが……?」
と薫が訊くと、辰はこくりと頷く。
「まちを、もやしつくしてた……」
「マジか──」
またこくりと頷いた辰に、平太は口から火を噴く初枝を思い浮かべて、ブハッと笑った。
「あはっ、いやいやいや、梅田さんが? あはははは、それはな……い」
と平太は爆笑してから、初枝に見られていたことに気付いた。
「私が、何かしら?」
初枝はフフフと不敵な笑みを浮かべる。
「か、かいじゅうだ……っ!」
これでとどめだと言わんばかりに、まだ寝ぼけているらしい辰がそう言うので、平太は盛大に噴いた。
「ブフッ──」
「……何がそんなに面白いのか、後で教えてもらおうかしら、平太くん?」
「ぁ……」
「それはさておき──ねぇ皆、怪獣の私より、お化けになった平太くんの方が、見たいわよね?」
にこりと笑って初枝が皆に訊くと、四人は興味津々というように平太を見てから大きく頷いた。
『みたい!』
「そうよね。ふふ、じゃあ平太くん、文化祭初日、楽しみにしてるわね」
と初枝がパチッとウィンクしてきたのを見て、さっき盛大に噴いた自分を呪う平太だった……。
その後平太が、子どもたちに何をやるのか質問攻めにされたのは言うまでも無い──
初枝「ガオー!……こんな感じかしら?」
平太(本物…!!)




