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成長

お久しぶりです。

平太が辰を見て──。

 平太(へいた)の通う高校も夏休みに入った。

 平太は高校三年のため、受験勉強に励んでいる。が、ずっと部屋にこもって勉強しているのも息が詰まるので、外の空気を吸いに平太は部屋を出た。


「あら、どこか行くの?」


 玄関で靴を履く平太に母が声を掛けた。

 平太は靴を履いて立ち上がると、ちょっと気分転換してくると答え、外にでた。


「……暑」


 もちろん夏真っ盛りなので、外は太陽が照り付けているし、蝉だって容赦なく鳴いている。

 平太はお財布持ってくればよかったな、と思いながら適当に歩く。


 高校に向かう途中の公園に着くと、夏休みということもあって親子の姿が見られた。

 保育ルームの子どもたちも今頃両親と遊んでいるのだろうかと思いながら、キャッキャとはしゃぐ小さな子どもたちを眺める。


「……」


 両親と楽しそうに遊ぶ子どもたちをぼんやりと見ていると、聞き慣れた声に名前を呼ばれた。


「平太くん?」

「平太だ!」

「平太お兄ちゃん……!」


 声のした方に顔を向けると、そこに初枝(はつえ)と初枝に手を繋がれた(たつ)(あん)がいた。

 二人は平太のもとに駆け寄ると、キラキラとした目で平太を見つめる。


「あそべ!」

「あそぼう?」

「いいけど……今日保育ルームやってたんですか?」


 と後ろからついてきた初枝に訊くと、ふぅ、と一息吐いてから初枝が答えた。


「今日から保育ルームもお休みだったんだけどね、辰くんと杏ちゃんの親御さんが二人とも急に仕事になっちゃったみたいで、連絡があったの。それでちょうど学校に居たから、預かりますって話になって──」


 特別にね、今日はちょっと外に出てみたのと初枝は微笑む。

 平太はなるほどと頷いて、二人に視線を落とした。


「学校の外っていうのは初めてだな。何かしたいことあるか?」

「ブランコ!」

「わたしはなんでもいいかな」

「じゃあきまりだな! よっしゃー!」


 と辰がブランコに向かって走っていく。

 あ、こら——と平太は杏を初枝に任せて辰を追った。

 先にあるブランコは他の子どもが乗っているので、すぐには使えない。


「おらー!」


 と辰が声を発してブランコに近づいていくので、どけー!と辰がそのまま勢いで言わないかひやひやした。

 辰はブランコの前まで行くと、ぴたっと立ち止まる。


「なあ──」


 辰!と平太が呼び止めようとしたとき、辰は言葉の続きを言っていた。


「ブランコ、かわって」


 辰の言葉に、ブランコに乗っている子どもがポカンとしてから頷いた。


「うん、いいよー」

「ありがとな!」


 ニコッと辰はお礼を言って振り返ると、嬉しそうに平太に伝える。


「ブランコ、かわってくれたぞ」

「お、おお……、よかったな!」


 ちゃんと代わってと言えることに、平太は少し感動した。

 保育ルームだと「貸せよ」などと少し口が悪いのだ。

 ちゃんと言えるんだな……と平太はしみじみ思いながら、ブランコに座った辰の背中を押していく。


「平太ーもっとおせよー」

「はいはい──」


 辰の指示に従いながら、平太は考える。

 見てないとこで、成長してくんだもんな……。それに、親からだって色々教わるんだ。成長するよな──。


「へいたあああ! たかいー! とめろー!」

「あ? あ、悪い悪い」


 気づかないうちに結構な高さになっていて、悲鳴に近い辰の声に平太はブランコを止める。

 ブランコから降りると、辰はそそくさと初枝と杏の所に走っていった。


「平太がいじめる~!」

「いじめてないから──」


 と平太が三人の所に行くと、初枝と杏はベンチに座っていた。


「ここから見てる限りだと楽しそうにブランコしてたけどね」

「うん」


 と初枝と杏が頷きあう。


「そういうなら、杏も平太にせなかおしてもらえよ」

「わたしは、ここでせんせいとおはなししてたほうが、たのしいもん」

「むーっ……!」

「まあまあ、辰くんが怪我してないのがその証明よね」


 と初枝は微笑むが、それはそれでいいのか?と平太は若干疑問に思ったが、口にするのはやめた。


「……さ、私たちはそろそろ学校に戻らなきゃ。平太くんは?」

「俺も、勉強の息抜きに外出ただけだったんで、そろそろ帰ります」

「そうだったのね。少しは息抜きできた?」

「そうですね。辰の新しい一面も見られたんで、よかったです」


 と平太が微笑むので、初枝もそうなのねと微笑む。


「じゃ、また二学期にね」

「はい──」


 まだ遊び足りないという辰と、もうちょっと一緒にいたいという杏に、休み明けにまた会えるから、と言って平太は三人と別れた。



 家に向かいながら、辰の成長を思い出し、平太は自分も勉強面で成長しないとな……と一人思うのだった──





平太「頑張ろう」

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