願うのは
お久しぶりです。
明良の願いは──
平太と一緒に、明良が今日も保育ルームに来ていた。
保育ルームに入るなり、初枝に短冊とペンを渡され、平太と明良はぽかんとする。
「今年も、七夕の書いてもらうわよ! 皆にはもう書いてもらったから」
と笹を指さして初枝が笑った。
明良はその短冊に目を通して、すげーなと呟く。
初枝以外の全員が、平太の進学を願うものだったからだ。
「じゃ、私は隣の部屋行ってるからね」
「はい──……」
初枝に返事をしてから明良もささっと書いて、笹に飾る。
平太も書き終わっているだろうと明良が見ると、平太は少し考え込んでいるようだった。
「どうした?」
「いや、大したことじゃないんだけどな……。今ふと思ったんだけど、来年はもうここにいないんだよな……と思って」
「まあ、そうだな」
「だよな──」
と平太は言って、また少し考えてから短冊に書き始めた。
平太の書いた短冊を見て、明良は思わず鼻で笑ってしまった。
『子どもたちにたくさんの友だちができますように』
「はっ……なんだよこれ」
「いやだってさ、実際大切だろ?! 今はこの狭い空間で仲良しやってるけど、来年には三十とか四十近い人数のとこに入るんだぜ? 心配だろ……。辰は女子に普通に虫とか見せそうだし、それが原因で先生とかに迷惑かけそうだし、薫は静かだし、気の強い奴とかにいじめられないかとか、彩もたまに自分が一番みたいなとこあるし、杏は優しすぎて女子グループの一番上にパシられたりしないかとか……!!」
あまりにも平太が熱弁するので、明良は盛大にツッコんだ。
「お前は子どもたちの親か──!!」
「いや、違うけどな!! 皆ちゃんと両親いるしな!!」
でも──、と平太は続ける。
「半年以上一緒にいればさ、親心っていうか、皆の兄ちゃんみたいな気がしてくるんだよ。兄ちゃんなら弟とか妹のこと大切に思うだろ? そう思わない兄弟もいるだろうけど……俺は大切に思ってる。だから、皆には楽しい学校生活を送ってもらいたいんだ」
「お前……ほんとに子どもたち好きなんだな」
「ホントだよ、前までは大嫌いだったのにな! 自分でもびっくりだよ──」
と平太は肩を上げて見せる。
すると隣の部屋から子どもたちがやってきた。皆寝ていたのか、目を擦っている。
「んー……、平太と明良だ!」と辰。
「ほんとだ……!」と薫。
「きょうはふたりがあそんでくれるの……?」と杏。
「やったー!」と彩。
平太は「おお!」と笑って、しゃがむ。
明良はそんな平太を見て、受験とかどうでもよくなるな……と思った。
「──おい、明良、怪獣ごっこやるってよ」
「はいはい」
「それが終わったら家族ごっこだって」
と平太は子どもたちに手を引かれながら明良に伝える。
「わかったわかった、俺も入るよ」
と明良も平太と子どもたちのいるところに向かった──。
何度も怪獣役をやり、それから家族ごっこも真剣にやった平太と明良は、子どもたちと別れた。
下駄箱に向かう途中で、平太は思い出したように明良に訊いた。
「そういえば、明良は短冊に何て書いたんだ?」
「別に、普通だよ」
「逆に気になるだろ、それ」
「大丈夫だ、明日には忘れてるさ」
「言ったな? 絶対覚えてるからな、明日確認してやる……!」
と息巻く平太を見て、そんな気になるのかよと明良は笑うのだった──
『お互いに大学で上手くやれますように』
次の日。
平太「明良……(短冊を見た)。アイスでも奢ってやるか──」




