↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/89

願うのは

お久しぶりです。

明良の願いは──

 平太(へいた)と一緒に、明良(あきら)が今日も保育ルームに来ていた。

 保育ルームに入るなり、初枝(はつえ)に短冊とペンを渡され、平太と明良はぽかんとする。


「今年も、七夕の書いてもらうわよ! 皆にはもう書いてもらったから」


 と笹を指さして初枝が笑った。

 明良はその短冊に目を通して、すげーなと呟く。

 初枝以外の全員が、平太の進学を願うものだったからだ。


「じゃ、私は隣の部屋行ってるからね」

「はい──……」


 初枝に返事をしてから明良もささっと書いて、笹に飾る。

 平太も書き終わっているだろうと明良が見ると、平太は少し考え込んでいるようだった。


「どうした?」

「いや、大したことじゃないんだけどな……。今ふと思ったんだけど、来年はもうここにいないんだよな……と思って」

「まあ、そうだな」

「だよな──」


 と平太は言って、また少し考えてから短冊に書き始めた。

 平太の書いた短冊を見て、明良は思わず鼻で笑ってしまった。


『子どもたちにたくさんの友だちができますように』


「はっ……なんだよこれ」

「いやだってさ、実際大切だろ?! 今はこの狭い空間で仲良しやってるけど、来年には三十とか四十近い人数のとこに入るんだぜ? 心配だろ……。辰(たつ)は女子に普通に虫とか見せそうだし、それが原因で先生とかに迷惑かけそうだし、薫(かおる)は静かだし、気の強い奴とかにいじめられないかとか、彩(あや)もたまに自分が一番みたいなとこあるし、杏(あん)は優しすぎて女子グループの一番上にパシられたりしないかとか……!!」


 あまりにも平太が熱弁するので、明良は盛大にツッコんだ。


「お前は子どもたちの親か──!!」

「いや、違うけどな!! 皆ちゃんと両親いるしな!!」


 でも──、と平太は続ける。


「半年以上一緒にいればさ、親心っていうか、皆の兄ちゃんみたいな気がしてくるんだよ。兄ちゃんなら弟とか妹のこと大切に思うだろ? そう思わない兄弟もいるだろうけど……俺は大切に思ってる。だから、皆には楽しい学校生活を送ってもらいたいんだ」

「お前……ほんとに子どもたち好きなんだな」

「ホントだよ、前までは大嫌いだったのにな! 自分でもびっくりだよ──」


 と平太は肩を上げて見せる。

 すると隣の部屋から子どもたちがやってきた。皆寝ていたのか、目を擦っている。


「んー……、平太と明良だ!」と辰。

「ほんとだ……!」と薫。

「きょうはふたりがあそんでくれるの……?」と杏。

「やったー!」と彩。


 平太は「おお!」と笑って、しゃがむ。

 明良はそんな平太を見て、受験とかどうでもよくなるな……と思った。


「──おい、明良、怪獣ごっこやるってよ」

「はいはい」

「それが終わったら家族ごっこだって」


 と平太は子どもたちに手を引かれながら明良に伝える。


「わかったわかった、俺も入るよ」


 と明良も平太と子どもたちのいるところに向かった──。



 何度も怪獣役をやり、それから家族ごっこも真剣にやった平太と明良は、子どもたちと別れた。

 下駄箱に向かう途中で、平太は思い出したように明良に訊いた。


「そういえば、明良は短冊に何て書いたんだ?」

「別に、普通だよ」

「逆に気になるだろ、それ」

「大丈夫だ、明日には忘れてるさ」

「言ったな? 絶対覚えてるからな、明日確認してやる……!」


 と息巻く平太を見て、そんな気になるのかよと明良は笑うのだった──



 『お互いに大学で上手くやれますように』





次の日。

平太「明良……(短冊を見た)。アイスでも奢ってやるか──」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。