寒い寒い
おしくらまんじゅう。
※歌詞が曖昧です。
まだ早いということで、保育ルームは暖房をつけていなかった。
「せんせー、さむい〜」
と辰がばたばたとその場で足踏みをする。
「大丈夫。動けばすぐ温まるから」
初枝は笑って辰の頭を撫でてから、平太を見た。
「平太くん、ちょっと職員室行ってくるわね」
「わかりました──」
平太は頷いて、初枝を見送った。
「平太ー、さむい〜」
初枝が出て行ってから、辰はまだうだうだ言いながら、ばたばた足踏みをしている。
「動いてれば温まるから、しばらくそうやってろよ──」
と平太はやっていた課題をリュックにしまいながら辰に言う。
すると薫が、思いついたように言った。
「おしくらまんじゅう」
「おしくらまんじゅう?」
ぴたっと辰が止まって、首を傾げた。
彩と杏は、知ってるというように会話に加わる。
「あたししってる! おしりとおしりで、おしあいっこするんだよね!」
「どんって!」
彩と杏がお尻で押し合いをしてみせる。
「そうそう──」
小さい頃兄ちゃんとやったなぁ。と平太は思い出して、小さく笑う。
凌平の方が力があるので、すぐに平太は押されて倒れていた。
そんなことを思い出し、平太は言った。
「やるか? おしくらまんじゅう」
「それやったら、あったかくなるのか?」
と辰が平太に訊く。
それに平太は、笑って答えた。
「なるぞ」
「じゃあやる!」
「そうこなくっちゃな──!」
平太はにやりと笑って、辰に説明をし始めた──。
*
「……まあ、単純にお尻で押し合うんだ。わかったか?」
「わかった!」
と辰が頷く。
「よし。じゃあ背中合わせで丸くなるぞ」
平太は膝立ちになって、高さを子どもたちに合わせる。
そして背中合わせで丸くなる。
「かけごえ、いうんでしょ?」
と彩が平太に言う。
「そうだな。あんまりよく覚えてないけど……」
平太はこんな感じだっけかな? と思いながら、口ずさむ。
「おしくらまんじゅう、押されて泣くな──」
「そうだよ。おーしくらまーんじゅ、おーされてなーくな、だよ」
と杏も言う。
「だよな──。辰、わかったか?」
「うん。わかった!」
辰は頷く。
そして、平太の掛け声で、おしくらまんじゅうを始める。
「よし、じゃあせーのでやるぞ──せーの……」
『おーしくらまーんじゅ、おーされて、なーくな!』
お互いにお尻を当てて、跳ね返る。
『おーしくらまーんじゅ、おーされて、なーくな!』
どんっ、と辰が勢いよく平太を押した。
「ぶはっ──てめ、強く押しすぎだろっ──」
と平太もどんっ、と押し返す。
「うわっ、はははは」
と辰が笑う。
「じゃあつぎぼくねっ──」
「おわっ──薫やったな? おらっ」
「あははは」
と薫もなぜか押し返されて笑う。
「じゃあ、あたしたちも──」
「それっ」
「うおっ、二人は卑怯だろっ」
と平太は押してきた彩と杏を、一緒に押し返す。
「きゃあっ、あははははは」
「あはははははははは」
と二人も笑った。
平太はなぜ笑うのかわからず、四人に訊いた。
「何で笑うんだ?」
すると四人は一瞬ぽかんとしたあと、にこっと笑って答えた。
『たのしいから!』
その答えに、平太はきょとんとする。
それから、そっか……。楽しいからか。と呟くと、平太も笑った。
「はは──だよな。楽しくなかったら、笑わないよな」
四人はそう言って笑う平太を見て、また笑った。
それから、またおしくらまんじゅうをやり始めた。
押しては跳ね返され、跳ね返されたらまた押し返す……。それを繰り返した──
*
「ただいま──」
初枝が保育ルームに戻ってくると、まだ平太たちはおしくらまんじゅうをしていた。
「まあ、懐かしい……」
初枝は平太たちを見て、ふふっと笑う。
「あったまったかしら」
初枝は持ってきた温かい飲み物をコップに注ぎながら、楽しそうにおしくらまんじゅうをする平太たちに、いつ声を掛けようかしら……。と少し考えるのだった──
明良「おしくらまんじゅうしたのか?」
平太「意外と楽しかったぞ(笑顔)」
休日投稿ですが、次は来月の第二、三週目からになります。




