トリックオアトリート
平太、ちょっとだけ後悔。
ハロウィンでしたね。
文化祭も一段落し、平太たちも普段の授業に戻った。
もちろん、保育ルームに行くことも変わらない──
『トリックオアトリート!』
平太が保育ルームに入って、子どもたちの一言目がそれだった。
「……ハロウィンか──」
すっかり忘れてた……というように平太は手を顔の前で合わせて、
「悪い、お菓子ない……」
と言う。
「ないのー?」
「おかしー」
と辰と彩が口を尖らせる。
杏と薫も口には出さないが、若干残念な顔をしている。
「ごめんって──てか梅田さんは?」
と平太は初枝がいないのを確認して訊く。
「ちょっと、しょくいんしついってくるって」
「わすれもの? とりにいった」
と杏と薫が答える。
「そっか──じゃ、戻ってくるまで何する?」
「かぞくごっこ!」
と彩が手を挙げる。
「ヒーローごっこだろ!」
と辰も手を挙げて言う。
「きのうやったから、きょうはかぞくごっこって、やくそくしたでしょ」
と彩が辰に向かって抗議する。
「でも〜……」
「しかたないよ、やくそくだもん。あしたヒーローごっこやろう?」
と杏が辰に言う。
「……わかった。あした、ヒーローごっこやる」
辰は頷いて、ニカッと笑った。
「じゃ、家族ごっこやるか──」
そして平太の一言により、家族ごっこが始まった。
*
家族ごっこをやり始めて、数十分。
初枝が、ビニール袋を持って保育ルームに戻ってきた。
「ごめんね〜、遅くなっちゃった──」
と初枝は持っていたビニール袋を、テーブルに置いた。
「大丈夫ですけど──何ですかこれ」
と平太が近づいて訊く。
「ほら、今日アレでしょ? だから──学校に来る前に買っておいたの」
ふふっと笑って、初枝が言う。
「……アレ? ああ、ハロウィン」
「おかしー?」
「そうそう──そうよ」
と平太と辰の質問に答えて、初枝は笑う。
「たべるー!」
「わたしもー」
「ぼくもー」
と彩たちも近寄ってくる。
「じゃ、皆席着いてね」
『はーい!』
「俺手伝いますよ」
「ありがとう──」
子どもたちは席に着き、初枝と平太はジュースやお菓子の準備を始めた。
「……はい、じゃあ皆。言うことわかるわよね?」
と席に着いて初枝が五人を見渡す。
「いただきます!」
「そうだけど、ちょっと違うわね」
と初枝が辰に言う。
「ありがとうございます」
「杏ちゃん。偉いけどそれじゃないわ」
と初枝は笑顔で首を振る。
すると、薫がわかったのか、ハッと初枝を見た。
「薫くんわかった?」
「うん!」
と言いたそうに頷く。
「あっ! わかった!」
と彩も笑って初枝を見る。
そして、薫と彩はこそこそっと辰と杏に言うと、平太を見る。
「……どうした?」
「平太もいってね」
と薫が言う。
平太は納得して、わかった。と頷いた。
「……わかった? じゃ、言ったら食べましょうか」
と初枝が微笑んで五人を見る。
『トリックオアトリート!』
「めしあがれ──」
初枝の一言で、皆でお菓子を食べ始める。
ふと気になって、平太は初枝に訊いた。
「今俺食べてますけど、よかったんですか? ハロウィンって、子どもたちがお菓子をもらいに回るんですよね」
「いいのいいの。私からしたら、平太くんだって子どもだもの」
と初枝はジュースを一口飲んで笑う。
「それに……こうやって皆が喜んで食べてると、嬉しいでしょ──?」
と初枝が子どもたちを見た。
平太もつられて子どもたちを見ると、確かに喜んで食べていた。
「……そうですね」
俺もお菓子忘れなきゃよかったな……と平太は少しだけ後悔するのだった──
平太「トリックオアトリート」
凌平「母さんに言えばもらえるぞ?(お菓子を見せる)」
平太「マジか!(驚)」
休日投稿です。




