ぶんかさい?
準備と約束。
朝、初枝は保育ルームに向かう途中に、何やら生徒たちがせわしなく廊下を行き来しているのを見た。
「あ……文化祭ね──」
掲示板に貼られたポスターを見て、初枝は納得した。
ポスターには、文化祭の有無と日時が書かれていた。
平太くんたちは何をするのかしら。と初枝は思いながら、保育ルームに入るのだった──。
*
そして放課後。
疲れた顔で、平太は保育ルームに現れた。
「……こんにちは」
「まあ、どうしたの? そんな顔して──」
「ちょっと、文化祭の準備で……」
と平太は鞄をテーブルに置いて伸びをする。
「う〜……ん──」
「平太だ!」
「平太」
「なにするー?」
「平太お兄ちゃんおつかれ?」
と四人がやってくる。
「ちょっとな──文化祭の準備で……」
「ぶんかさい?」
と辰が言って、四人は首を傾げる。
「文化祭っていうのは、まあ……簡単に言うと、学校内でのお祭りみたいなもんだな」
「へえ」
と辰が言って、薫が訊く。
「平太はなにするの?」
「俺たちは、駄菓子屋。駄菓子売るんだ」
「あたしたちも、いっていいの?」
と彩が平太に訊く。
「大丈夫だと思うぞ。でも、お金いるから持ってないと買えないぞ」
「じゃあ、あかあさんにもらっていく!」
と杏が言う。
「それならOK──」
と平太は笑う。
すると初枝が平太に訊いた。
「じゃあ当日平太くんは店番?」
「うーん……かもしれないです」
「平太もいっしょにあそびたい」
あそびたいあそびたい、と四人が平太を囲む。
「出来たらな、出来たら──仕方ないんだよ、クラスの規則とかあるんだから」
そうは言っても、子どもたちには関係ないのでしょんぼりする。
「あー……わかったよ、相談してみる。それでダメだったら、諦めろよ」
『…………』
それでも四人は頷かない。
平太は初枝を見るも、初枝はどうにもできないので苦笑いする。
「……じゃあ、説得してくる──その代わり、当日騒ぐなよ?」
『うん!』
と四人は一瞬にして笑顔になる。
「……じゃあ、言ってきます」
「頑張って」
「はい……」
平太は背中に四人の笑顔を受けながら、保育ルームを後にした。
*
「……で? 子どもたちと回る時間が欲しい、と」
「そう。ダメかな? もちろん、役割は果たすし、ちゃんと働くから」
「……それって、サボる口実じゃないわよね?」
「違う違う! 子どもたちに誓ってもいい!」
「…………まあ、松城くんはしっかりしてるし……、子どもたちがそう言ってるんなら──……いいよ。でも、ちゃんと仕事してね」
と実行委員の女子は、仕方ないというように言った。
「もちろん!」
「じゃあ、今から内装よろしく」
「え……」
「え……、じゃないわよ──内装。間に合わないから。早く」
「じゃあ言ってくる、必ず戻るから──」
平太は実行委員の女子が何か言おうとしたのを無視し、保育ルームに向かった。
*
「……OK出ましたっ」
「ほんと? よかったわね」
『やったー!』
と子どもたちははしゃぐ。
「で、その代わり今日は手伝いできません。すいません」
「大丈夫大丈夫。頑張ってきてね」
「はい──」
と平太は鞄を掴むと、また保育ルームを出て行った。
「え? 平太?」
「いっちゃった……?」
「なんで?」
「かえっちゃった?」
と四人は初枝を見上げる。
初枝は視線を合わせるようにしゃがんで言った。
「当日一緒に回るために、今日その分頑張るんだって。だから、今日は我慢ね」
「でも……」
「当日一緒に回りたいでしょ?」
と初枝は四人を見る。
四人は顔を見合わせてから頷く。
「じゃあ、我慢しなきゃね。その代わり、当日いっぱい遊んでもらえるわよ」
と初枝は四人の頭を撫でる。
四人は笑って、
『そっか!』
と大きく頷くのだった──
実行委員の女子「戻ってこなかったら、さっきのこと白紙に戻すところだったわ」
平太「すいません……!」
休日投稿ですが、来週投稿出来るかわかりません。




