接触
第一話に繋がる話です。
※過去の平太なので、喋り方や性格が違います。
「四人と会ったのは、体育の授業があった時だったんですけど──」
と平太は口を開くのだった……。
*
ある晴れた日の六時間目。
六時間目は体育の授業だった。
「体育外だって」
と明良が平太に言う。
平太は体操着に着替えながら、
「了解──先行ってて」
と言う。
「わかった」
遅れんなよ、と一言残してから、明良は教室を出て行った。
平太はおー、と答えてからトイレに向かう。
「……ふぅ──よし」
トイレから出て、平太は少し駆け足で下駄箱に向かった。
玄関で靴に履き替えて、平太は皆が集まっている所に向かった。
向かう途中、何かが足に当たって平太は下を見た。
「……クマのぬいぐるみ?」
ひょいっと拾って、辺りを見渡す。特に持ち主らしき人物は見つからなかった。
少しの間ぬいぐるみを見ていると、平太は誰かにど突かれた。
「いってえ!」
「それかえせ! 杏のだぞ!」
と男の子二人と、その少し後ろに女の子二人がいた。
「かえしてよ。どろぼー」
ともう一人の男の子が言う。
「は? 大体、落としたやつが悪いんだろ。ていうか、お前……。ど突いただろ。謝れ」
「はあ? おまえが杏のぬいぐるみどろぼーしたんだから、おまえがあやまれよ!」
とど突いた男の子は平太に威嚇する。
「勘違いすんな。落ちてたのを拾ってやったんだ。お礼を言うのが筋ってもんだろ──」
と平太は男の子を睨み付ける。
男の子は怯まず、平太を見上げている。
すると、もう一人の男の子が口を開いた。
「ぼくたちよりとしうえなのに、おとなげないね」
「薫くん!」
とぬいぐるみを落としたであろう本人の杏が、そんなこといっちゃダメだよ! と言うように名前を呼ぶ。
「んだガキ。このぬいぐるみがどうなってもいいのか?」
と平太はぬいぐるみを片手で持ち、くるくる回す。
「あっ、ダメ! らんぼうしないで!」
と杏が、泣きそうな顔で平太の前にいく。
「そこのガキが謝ればな」
「辰くん! あやまって!」
とど突いた男の子に向かって杏が言う。
辰は悔しいのか、口をぎゅっと結んで拳を握っている。
「そいつ、どろぼーだもん! あやまんねえぞ!」
「泥棒じゃねえって言ってんだろうが! 拾ったんだよ! それをお前が勘違いしてど突いたのが悪いんだ。謝れば返すって言ってんだろ──」
と平太はイライラしてくる。
「……あやまってかえしてもらおうよ」
「彩はあいつのミカタなのかよ!」
「ちがうけど……、あやまればかえしてくれるって──」
平太はそのやりとりにイライラして口を開いた。
「あー、もういいわ。ぬいぐるみなんてどうでもいんだろ──っ!」
平太は木に向かってぬいぐるみを投げた。
ぬいぐるみは、キレイに弧を描き、木の枝に挟まった。
「あっ……、あ」
「バカだな。早く謝ればよかったのに──」
「ぅ、うぇっ……うわあああん、クマさんがっ、ひっ、うわあぁぁぁっ、ああああ」
と杏が泣き出してしまう。
「っうるせえな! 泣くなよ!」
「びぇぇぇぇえええええ──」
「クマさんだ! クマさんわたせばなきやむぞ!」
と辰が平太に言う。
「お兄ちゃんはやく!」
と薫も言うので、
「チッ……取ったら泣くなよ?!」
と平太は前置きして、木に登ってぬいぐるみを手にする。
何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ──! と平太はむすっとしたまま木から降りて、杏にぬいぐるみを渡す。
「……ほら、ぬいぐるみ、泣くな──」
「うっ……お兄ちゃん……っ」
と杏はごしごしと目をこすってから平太を見た。
「何だよ……」
「ぬいぐるみ、あり、がとう──」
「ぇ……、べつに……お前が泣き止まないから……」
と平太は複雑な気持ちになる。
「お、おれもっ、悪かったな!」
と辰も謝ってくるので、
「……えっと──」
平太も一言謝ろうと口を開いた。が、それは先生の声によって遮られてしまった。
「松城平太あ! 何やってるんだ!」
と体育教師がやってくる。
「ん……? 泣いてるじゃないか! 保育ルームの子どもたちだぞ? 何やってるんだ!」
「え? あ、いや、あの──」
「言い訳するんじゃない! 明日改めてちゃんと謝りに行け。絶対だぞ! それと、お前は外周だ。来い──!」
と体育教師は平太の体操着を引っ張って行く。
「え……あ、ちょっと──」
平太はきょとんとする四人が遠くなるのを見ながら、引きずられて行くのだった……。
*
「……で、あの日平太くんは来てたわけね」
と初枝は思い出す。
「はい。……謝れなかったんですけどね」
と平太は苦笑いで答える。
「じゃあ、今謝っちゃいましょう。それで清算。ね?」
初枝が笑って平太を見る。
平太はちらっと四人を見てから、咳払いをする。
そしてちゃんと四人と向き合ってから口を開いた。
「あの時は、悪かった……。許してくれるか──?」
四人は顔を見合わせて、にこっと笑うと言った。
『いいよ!』
「……──」
平太はぽかんとして四人を見た。
「平太、マヌケなかおしてる!」
と辰に言われてハッとしてから、平太は辰の頬を軽く引っ張る。
「してねえよ──っ」
「いはいっいはいっ!」
「辰が悪いんだろ──」
と辰と戯れている平太に、初枝が声をかける。
「じゃあ平太くん、これからもよろしくね?」
平太は辰の頬から手を離し、初枝にちゃんと向き直ってから言った。
「はい──。これからも、出来る範囲で頑張ります」
「うふふ。よろしくね」
初枝はあの時のように、和やかに笑うのだった──
明良「あの時の外周って、そういうことだったんだな」
平太「……はは」
休日投稿です。




