そういえば
第一話に繋がる話の前の話。
いつものように保育ルームに来ていた平太は、ふと初枝に訊かれた。
「そういえば、結構長くお手伝いしてもらってるけど、どうして平太くんは保育ルームに来てたの?」
平太は読み聞かせていた本から顔を上げて、初枝を見た。
「あー……えっと──」
と平太は苦笑いする。
すると平太を囲んで本を読んでもらっていた四人の中で、辰が口を開いた。
「せんせーが、平太とはじめてあったときよりまえに、おれらは平太にあってるんだぞ」
「そう。せんせーが、はじめてあったひの、まえのひ」
と薫も言う。
「平太お兄ちゃん、こわかったんだよ」
「うん……ことばが、いまとぜんぜんちがってた」
と彩と杏は思い出して、少し暗い顔をする。
「あの時は子どもが嫌いな時だったし、今より全然子どもへの見方が違ってたから……仕方なかったんだって」
と平太はあわあわと手を振る。
そんな平太を見て、初枝は訊く。
「へえ。聞かせてくれる? その時の話」
「え……」
平太は引きつった顔をして固まる。
「言えないほどひどいことでもしたの?」
「いやぁ……どうでしょう──」
と平太は斜め上に視線を泳がせる。
「平太ひどかった! な、薫」
「うん。ひどかった」
と辰と薫が頷く。彩と杏もこくこくと頷いている。
「そんなひどかったか……?」
と平太は不安になる。
「うん。『ガキ』とか『バカ』とか、いろいろいってた」
「そうだな。いまもたまにいうけど、ぜんぜんちがってた」
と薫と辰に言われ、平太は小さくなっていく。
「めつきもわるかったよね」
「うん。するどかった。キツネみたいだった」
と杏と彩にも言われ、平太はもっと小さくなる。
「余計気になるわねぇ。平太くん?」
と初枝は笑って平太を見る。
そんな初枝に向かって、
「いやいや、聞かなくて大丈夫ですよ」
と平太は手を振る。
だが、初枝も引き下がる気はないらしく、
「平太くん。いつかは話さなきゃだめなのよ? それに、子どもたちを預かってる側として、聞く権利はあると思うの。あと、私が手伝いを頼んだんだし、聞いておくべきだと思うの。だから、話してくれる?」
と今度は真剣な顔で言う。
「う……。……えっと……はい……」
と真剣な顔でそんなことを言われたら、平太は戸惑いながらも頷くことしかできなかった……。
「それで、平太くんは何をしたのかしらね?」
「……えっと、それは……、ですね……──」
と平太は改まって、思い出すように話し始めるのだった──
長くなりそうなので、切りました。
次回、第一話に繋がる話を。(なぜ平太は保育ルームに来ていたのかと、初めて遭遇した時の話)
休日投稿です。




