おそい
通常授業になる。
夏休みも終わり、今日から平太も通常授業になる。
保育ルームでは、子どもたちが首を傾げていた。
「せんせー、きょう平太は?」
辰が部屋を見渡して、初枝に訊く。
「今日から通常授業だから、平太くんは放課後から来るわよ」
と初枝が答える。
「ほうかごぉ? つまんない」
「仕方ないわ。もう休み終わりだから──平太くんも勉強頑張ってるから、来るまで待ってましょ」
と初枝は辰に微笑みかけた。
辰は納得できていないが、仕方なく頷くのだった。
*
「夏休み、皆さんはどう過ごしましたか? 先生は、家族で旅行してきました。そんなことはさて置き、もう休みも終わりです。これからビシバシ授業やっていくので、頑張りましょう」
と先生が教卓の前で話した。
「それじゃあ、授業の準備を始めてください──」
そう言って先生は、教室を出て行く。
「あ〜……もう通常授業とか早くね?」
「もう休み終わりだもんな。てかさ、平太ずっと保育ルーム行ってたの?」
「ん? うん。子どもたちの親が休みの日以外全部な──」
と平太は教科書を出しながら明良に言う。
「マジかよ。すごいな。楽しかったか?」
「まぁ……、梅田さんの怖い話以外は楽しかったよ。うん」
「へえ怖い話ね──てか学校来すぎじゃね? 帰宅部としては」
「まぁ、確かに……」
と平太は頷く。
「そう言われたら、結構長い時間過ごしたな……」
「そしたら今、『平太がいない』って、子どもたち寂しがってるかもな」
「はは、どうだろうな──」
そしたらちょっと嬉しいかも。と平太が笑ったとき、授業始まりのチャイムが鳴った。
*
平太が授業を受けている間。
保育ルームは、静かだった。
そして放課後になり、子どもたちはそわそわし始めていた。
「せんせー、平太は?」
「そろそろ来るわよ。今掃除してるんじゃないかしら」
と時計を見て、初枝が薫に答える。
「平太お兄ちゃん、おそい」
「ろうかでまつ?」
と彩に杏が言う。
「おでむかえするんだな! せんせー、いい?」
と辰を含めた四人が初枝を見る。
四人に見つめられたら、ダメとは言えない初枝は、
「掃除の邪魔にならないようにするのよ?」
と言ってから、
「いいわよ。行ってきて」
と微笑む。
四人はぱあっと目を輝かせてから、いってきます! と口々に言って保育ルームを出て行った。
「平太くるかな」
「そろそろだよ」
ドアの前で待ちながら、辰に薫が言う。
「あ、きた!」
「平太お兄ちゃん!」
と彩が見つけて、杏が平太を呼んだ。
「どうした? 皆揃って──」
平太は驚きながら、四人に近づく。
「平太おそいぞ!」
「仕方ないだろ。掃除あったんだから」
と辰に平太は言う。
「きょう、ほんよみおわったよ」
「マジか。じゃあまた借りに行くか」
と薫に平太は言う。
「あのね、きょうは彩ちゃんとおけしょうしたんだよ」
「そっかそっか。楽しかったか?」
「うん! ね、彩ちゃん」
「うん! 杏ちゃんかわいかったんだよ!」
「へえ──」
と保育ルームの前で話している声を聞いて、初枝が保育ルームから顔を出して言う。
「盛り上がってるとこ悪いけど、中に入って話してくれる?」
「あ、すいません……。ほら、中入れ」
『はーい』
と平太と四人は中に入った。
中に入ると、初枝が平太に言った。
「もうね、平太くんが来るまでずっとそわそわしてたのよ? まだかまだかって──」
平太が四人を見ると、四人は何をしようかわいわい話していた。
「……そうですか」
「そうなの。静かだったのが、今じゃ嘘みたいよ」
と初枝は笑って、わいわい話す四人を見る。
「平太ー、ヒーローごっこやろうぜ!」
「ほん、かりにいくんだよね!」
「にんぎょうあそびしようよ」
「かくれんぼでしょ!」
と四人は平太を囲んで言う。
平太はそれが嬉しくて、
「全部やるか。本は今度になるけど、絶対行くから。今は我慢な?」
と薫に言う。
「……わかった。こんど」
「うん──じゃ、まず何からやるかだな」
と平太は皆の頭を撫でてから、鞄をイスに置く。
四人は笑って、口々に我先にと言うのだった──
嬉しそうな子どもたちを見て。
初枝「ふふ──(イスに座り、五人を見守る)」
休日投稿です。




