おいしい
お昼。
ピーマンかお菓子か……
夏休みも終盤に差し掛かったある日。
平太は保育ルームでお昼をとることが多くなっていた。
「皆、そろそろお昼にしましょう」
初枝がお弁当箱を掲げて、五人に言う。
「おひるー」
と辰が恐竜の人形を投げ捨てて、初枝のもとに行く。
そんな辰に、平太は注意する。
「辰、片付けろ」
「薫のがちかいから、薫にたのんで」
「自分でやれ」
「……わかったよぉ──」
と辰は渋々戻ってきて、人形を箱にしまう。
「薫は、本しまってこい」
「うん──」
と紙袋に本をしまいにいく。
彩と杏も、自ら人形を箱にしまっていく。
そしてそれぞれお弁当箱を持って、テーブルに集まった。
「はい──じゃあ皆、手を合わせて……いただきます」
『いただきまーす』
「いただきます──」
初枝は、自分で作ったお弁当。
子どもたちは、親に作ってもらったお弁当を広げる。
平太は、コンビニで買った菓子パンをテーブルに置く。
「……? 平太、それなに?」
と辰が袋の中に入っている物を指差した。
「ん? あぁ、お菓子の詰め合わせ。ちょっと食べたくなったから、買ったんだ」
「へえー。おれにもちょうだい」
「だめ。全部食べたらやるよ」
と平太は辰のお弁当箱を指差して言う。
「じゃあ、あたしも?」
と彩も訊いてくる。
「ああ。ちゃんと食べたらだからな。もちろん、薫と杏もな」
と平太はお菓子を見せた。
「わかった!」
「うん!」
と薫と杏も頷く。
「私も貰えるのかしら?」
「もちろんですよ──」
平太は初枝に向かって笑った。
そして食べ終わる頃、平太はお菓子の詰め合わせを開封した。
「はい、梅田さん」
「ありがとう」
と初枝は受け取る。
「ほい、薫、彩、杏」
「ありがと」
「ありがとー」
「ありがとう」
と三人も受け取った。
辰だけが、まだ残っていた。
「食べないのか?」
「ピーマン、きらい……」
と辰はフォークでピーマンを避ける。
「食べなきゃ、あげないぞ?」
「やだっ! おかしたべる!」
「じゃあ頑張れ」
と平太はフォークにピーマンを刺して、辰に向ける。
「ぅ……平太がたべて」
「残念だなぁ、そしたらお菓子あげられない」
と平太は残念そうな顔になる。
「…………」
辰はフォークを受け取って、ピーマンとにらめっこする。
「辰、だいじょうぶだよ。はなつまんでたべれば、あじしないから」
と薫がアドバイスする。
「いきできないじゃん」
「口でするんだよ」
と平太が辰にツッコむ。
「辰、がんばれ! あたしたちまってるから!」
と彩がグッと拳を作る。
「がんばれ、辰くん……!」
杏も応援する。
「それ食べられたら、辰くんカッコいいわよ」
と初枝が微笑む。
それを聞いて、辰は目をぎゅっと閉じて鼻を摘まむと、ピーマンを口に入れた──。
『お──』
「…………ん──」
麦茶を飲んでから、辰は笑った。
「たべられた!」
「よし──ほれ、辰」
と平太はお菓子を渡す。
「やった! ありがとー!」
「どういたしまして」
そして、六人一緒にお菓子を食べる。
『おいしい──!』
「ね、おいしいわ」
「うん、うま」
と六人は笑った。
やっぱり、ご飯に限らず、お菓子も皆で食べれば倍美味しいのだった──
サッカー部の昼。
先輩「玉子焼きゲット~♪(明良の弁当から取る)」
明良「あ──唐揚げゲット~♪(先輩の弁当から取る)」




