図書室へ
薫のお話。図書室に行きます。
『スー……スー……』
午後。お昼を食べて、お腹いっぱいになった辰と彩、杏は、隣の部屋で寝てしまっていた。
だが、薫だけは眠くないのか起きている。
「平太」
「ん?」
と平太は課題をやりながら答える。
「……いいや」
と薫は本を取りに行き、読み始める。
「何だ……?」
平太はそんな薫を見て、はっきり言えよ……と思う。
とりあえず、課題を終わらせて薫の隣に行く。
「薫〜」
「なに?」
「……図書室、行くか?」
「いいの……?」
と薫の目がきらきらと輝きを帯びていく。
「三人とも寝てるし、梅田さんに言ってから行けば大丈夫だ」
「うん! いく!」
「よし。行くか──」
平太は初枝に一言かけてから、薫と保育ルームを出た。
*
図書室は、本を整理している司書さんしかいなかった。
「人いないな──」
「わぁぁぁぁぁ……//!」
図書室を見回した平太をよそに、薫は感動の声をあげた。
「ほん! いっぱい!」
「だろ? 司書さんに一言かけるから、好きに見てて」
「うん──!」
と薫は近くの本から目を通していく。
平太は、本の整理している司書さんに声をかけた。
「あの、保育ルームの子が本好きらしくて連れて来たんですけど、見てもいいですか?」
司書さんは整理している手を止めて平太を見た。
「ああ、いいよ。最近の子どもたちは本読まないから、嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「借りたいのあったら、貸し出すからね」
「わかりました──」
司書さんに頭を下げ、平太は薫のところに行く。
「どうだ? 何か面白そうなのあったか?」
「ありすぎて、こまる」
と薫はすでに数冊抱えていた。
「そっか。借りたいのあったら、借りていいってよ」
「ほんとっ?」
「ああ──」
嬉しそうに本を選んでいく薫を見ていると、ほんとに好きなんだなと思う。
「薫、本持つ。持ちきれなくなるだろ」
「あ、ありがとう」
本を受け取って、平太は薫について歩く。
渡された本を見ながら、薫に訊く。
「本、何で好きなの?」
「おもしろいから」
「他には?」
「おとうさんが、よみきかせてくれて、ほかのもよんでみたくなったから」
「へえ──」
薫の本好きは、父親譲りらしい。
「あと、おかあさんとおとうさんで、さんにんでよむの、たのしい」
と薫は平太を見上げて笑う。
「そっか。じゃあ、これだけあればいっぱい読めるな」
「うん! さいきんは、辰とかみんなでよむのも、たのしい──」
と薫は本を取って、これおもしろそう、と平太に渡していく。
それで何となく、平太は訊いていた。
「俺も、その皆の中に入ってんの?」
「うん。平太のよみかたは、おとうさんとせんせーのつぎに、うまい」
と薫が頷く。
三番目か。と思いながらも、
「そう──」
と平太は少し笑った。
それから、まだまだあるが、とりあえず選んで借りる本を決めた。
「すごいね、こんなに借りるの?」
と司書さんは積み上げられた本をチェックして、紙袋にいれていく。
「まあ、はい……」
と平太はこれを一階まで持っていくのか……と、紙袋二つ分を見て少しげんなりする。
「キミがこれ読むの?」
司書さんが、平太の横で嬉しそうに紙袋を見つめていた薫に訊いた。
薫は司書さんを見上げると、大きく頷いて答える。
「うん! たのしみ、です!」
「そっかぁ──きっと、本たちも喜んでるよ。大切に扱ってあげてね」
「はい!」
ときらきらとした目で言った薫に笑顔を向けてから、司書さんは平太に顔を向けて、
「無期限でいいから、読み終わったら少しずつ返すか、いっぺんに返すかしてくれる? ここに紙貼っておくから、題名と同じ文字に斜線いれてくれればいいから」
と紙を見せてから、掲示板に画鋲で貼り付ける。
「わかりました。ありがとうございます」
「いやいや、こうやって純粋に本が好きな子に会ったのは久しぶりだから、ちょっとテンション上がっちゃってね──」
と司書さんは、お恥ずかしいと頭を掻く。
「それじゃ、重いから気を付けてね──」
「はい。それじゃ」
と平太は紙袋を両手に持ち、先に図書室を出る。
が、薫は司書さんを何か言いたげに見上げていた。
「……ん? どうしたの?」
「あ、ありがとう、ございます!」
「……あはは//こちらこそ──またおいで」
司書さんは手を振って、薫を見送る。
「うん! また──」
薫も手を振って、図書室を出た。
「……薫、こんな読めんのか?」
重ぇ……と思いながら、平太は薫に訊く。
「うん! だって、ほんすきだから」
笑顔で答えた薫は、もう次に借りる本のことを考えていた──
次回は、杏のお話。
平太「腕痛ぇ……!」
明良「ダッセ(笑)」
平太「…………(じと目)」




