似合う似合う(笑)
彩のお話。
お化粧。
次の日。
今日は、辰と杏がいなくて、彩と薫がいる。
「……何か、不思議だ」
と並んで本を読んでいる二人を見て、平太は呟く。
それもそのはず。彩と薫が、並んで本を読んでいることは滅多にないからだ。
「……つまんない」
「え? いま、いいとこだよ?」
と薫は飽きてしまった彩に、困ったように言う。
「もうあきた。よまない」
「……そう」
とシュンと薫は本を抱き寄せて、隣の部屋に行く。
「平太お兄ちゃんあそぼ」
「薫はいいのか?」
「うん。もういい──だってあれ、にかいめなんだもん」
と彩がふぅ、と息を吐く。
「そうなの……」
「それより、おけしょうごっこ、いっしょにやってくれるんでしょ」
「え……?」
と平太はいつぞやの約束を思い出す。
「あれだろ? 彩がお化粧してるのを見てるだけでいいんだろ。なら楽……」
「ちがうよ。いっしょに、やるんだよ──」
と彩はおもちゃのお化粧箱を持ってきて見せる。
「ええっ!?」
「やくそくでしょ。はやくはやく」
と平太を下に座らせる。
「いやいや、俺はいいよ──薫ー! 薫来ーい!」
平太はとりあえず薫に助けを求める。
薫は隣の部屋から出てきて、平太の隣に座った。
「なに?」
「薫は、俺が女になったら嫌だよな」
と薫に訊く。
薫はよくわからないのか、首を傾げる。
「じゃあ、薫もいっしょにやろ! あたしがかわいくしてあげる!」
と彩がお化粧箱を開けて、セッティングを始める。
「えっ、待て、それ落ちるよな? 大丈夫だよな?」
と平太は確認する。
「みずとかおゆで、あらいながせるよ」
と彩が笑って親指を立てる。
「……う……わかった」
断ることも出来たが、ここで断って約束破ったなどと言われるのもあれなので、平太は従うことにした……。
*
「かんせーい!」
数分後、彩が満足げに手を叩いた。
平太とまきぞえになった薫は、鏡を見ている。
「うわぁ……スッゴく、ステキ……」
と真っ赤な口紅と真っ赤な頬を見て、平太は苦笑いで言葉にする。
「…………」
薫は言葉に出来ず、鏡を見つめていた。
「これでふたりも、リッパなレディーよ!」
「……そうね」
と平太が相槌をうつ。
「……うん」
と薫もとりあえず頷く。
そこに、用事がありちょっと部屋を出ていた初枝が戻ってくる。
「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃったわ」
「せんせー! みてみて! これあたしがやったの!」
と彩が初枝を引っ張り、平太と薫を見せる。
「かわいくなったでしょ!」
彩に言われて、初枝は二人を見る。
「ぷっ──に、似合ってるわ……」
と初枝は口元を隠しながら言う。
それでも肩を小刻みに震わせているので、笑いを堪えているのが見てとれる。
「梅田さん笑ってるじゃないですか!」
「仕方ないわよ。似合ってるんだから──」
となおも笑いを堪えている。
「いいですよ! 薫、流しに行くぞ」
「うん……ぷっ」
「お前も俺の顔見て笑ってんじゃねえよ。薫だって似たようなもんだからな──」
と笑う薫を連れて、平太は流しに向かった。
二人が流しに行っている間。初枝が彩に提案をした。
「二人が戻ってくるまでに、彩ちゃんも可愛くなってみる?」
「ほんと?!」
「うん。とっても可愛くしてあげる──」
*
「すっきりしたー」
「うん」
と平太と薫が戻ってくる。
すると初枝が、笑顔で二人に言う。
「はいはい、二人とも。彩ちゃんが可愛くなりました──ほら、彩ちゃん」
彩は少し恥ずかしそうに、初枝の後ろから出てくる。
彩は、薄ピンクの口紅に、それと同じ色で頬を少し塗っていた。
「どう?」
と初枝が微笑む。
平太と薫は、彩を見てから言った。
「おお。似合ってるぞ」
「うん! かわいい」
と二人が頷く。
「ふふ……ありがと」
彩は嬉しそうに笑って、
「こんどは、杏ちゃんといっしょにしてもらいたいな」
と初枝に向かって言う。
「もちろんよ。可愛い子がもっと可愛くなっちゃうわね」
と初枝は笑って彩の頭を撫でた。
彩はえへへへと笑って初枝を見上げるのだった──
次回、薫のお話。
お化粧されてる平太を見た。
明良「……そんな願望あったのか──」




