虫取りだ!
辰が主体のお話です。
明良もちょっと出ます。
「あれ?」
平太は首を傾げた。
今日は薫と彩が来ていなかった。
「梅田さん、今日は辰と杏だけなんですか」
「そうなの。前に携帯に連絡があってね──薫くんはお父さんが今日休みになったらしくて。彩ちゃんは、お母さんが休みになったから、今日は来ないって。で、明日は辰くんと杏ちゃんが来ないから」
「そうなんですか──」
初枝に訊いてから室内を見渡すと、二人がいないだけで少しだけ広く感じる。
杏はスースーとウサギさんを抱いて寝ていた。
辰は窓の外を見ている。
とりあえず平太は、寝ている杏にタオルをかけてからイスに座る。
「……ふぁ」
今日は課題を持ってきてないので、平太は伸びをする。
すると今まで窓の外を見ていた辰が振り返り、平太のもとに駆け寄ってくる。
「平太! やくそく! むしとり!」
「しーっ。杏が起きるだろ」
「むーしー!」
「んん……」
と杏がもぞもぞと動く。
「わかった! わかったから静かにしろ」
「やったあ!」
と辰は飛び跳ねる。
とりあえず、初枝のもとに行く。
「杏が寝てるので、辰と虫取りしてきます」
「さすが男の子ね。わかったわ。行ってらっしゃい」
「行ってきます……」
平太は、はぁ。と一息吐いてから外に向かった。
*
外に出ると、辰は虫網を持って虫かごを肩から提げていた。
「いつ持ってきた?」
「くるときにもってきた。おれの」
と辰はいいだろ! これ、と自慢気に胸を張る。
「そうなの。で、何捕まえるんだ?」
「カブトとかクワガタ!」
「いるか? セミばっかだぞ」
ミーンミンミーンとセミの声ばかりが目立つ。
「チョウチョはダメなのか? いるぞ?」
「よわそーだからやだ」
「あっそう……」
と周りを飛んでいるチョウチョを見ながら、平太は口を閉じた。
「じゃあおれ、カブトさがしてくる!」
「待て待て、ついてくから──」
と走り出した辰の後を平太は追った。
*
「平太ー! たいりょうだ!」
「うお。マジかよ。大量だな」
虫かごには、カブトムシ一匹とクワガタ二匹、セミ一匹が入っている。
「狭そうだな」
「うん。でも、もってかえっていいのは、にひきまでだから、セミとクワガタいっぴきは、にがす」
「へえ。マイルールか?」
「ううん。おかーさんとのやくそく」
と辰は虫かごからセミとクワガタを逃がす。
「セミはいいのか?」
「うるさいから、ダメっていわれた」
「なるほど……」
外でも鳴いてるのに、家でも鳴かれたらかなわない。
「どっちがつよいかな」
「カブトだろ」
「クワガタは? はさめるよ?」
「カブトは突けるぞ?」
「……うーん」
と辰は腕を組む。
そこに明良がやってくる。
「何してんの?」
「虫取り」
と平太が答え、辰が虫かごを見せて言う。
「カブトとクワガタとった!」
「へえ。すごいな」
と明良は虫かごを見る。
そんな明良に平太が言う。
「てか焼けたな」
「ん? まあ、外部活だし」
と明良は平太に言われて自分の腕を見る。
「日焼けヤバいんじゃね?」
「あぁ、ヤバいよ」
とペラッと袖を捲ってみせる。
「くっきりしてる!」
と辰が目を丸くして驚く。
「ヤベー」
と平太は笑った。
明良の腕は、袖の中側は白く外側は茶色で、一目で焼けたなとわかるほどだった。
「じゃ、戻るから」
「おお。頑張れよ」
「おー」
と明良は走って戻っていった。
「じゃ、戻るか」
「おー」
平太たちも、保育ルームに向かって歩き出した。
ちなみに、辰が取った虫は、家で辰の父と辰が飼っています──
お風呂。
平太「ん……?焼けてる?!(驚)」




