ため息
遅くなりました。
ため息の訳は?
「はあ〜……」
と平太が、保育ルームのテーブルに伏せて、ため息を吐いていた。
まだ子どもたちは昼寝をしているので、部屋には平太しかいない。
初枝は、そんな平太を見て隣の部屋に向かった。
「皆、起きてる……?」
隣の部屋には、起きたばかりの四人が目をこすりながら座っていた。
「せんせー……?」
「どうしたの?」
「あ、平太……」
「あそぶー」
と四人が部屋から出て行くのを、初枝は止める。
「ちょっと待って。平太くん、ため息吐いてたの」
「……ためいき?」
「そう。テーブルに伏せててね……だから、平太くんに迷惑かけないようにね。わかった?」
と四人を見渡して言う。
四人は顔を見合わせて、うんと頷いた。
「……梅田さん? 何してるんですか?」
ひそひそ声に気づいた平太が、部屋を覗きにくる。
初枝と四人は顔を見合わせて、小さく頷いた。
「何でもないわ。あ、今日チョコ買ったの。皆で食べましょう──」
「わーい!」
「チョコたべる……!」
「おいしいよね!」
「平太お兄ちゃんは、チョコすき?」
「うん。好きだよ」
と平太はいつものように笑う。
「じゃ、行きましょう──」
初枝は、平太と子どもたちを部屋から移動させた。
「じゃあ、皆座って待っててね!」
と初枝は給湯室に向かった。
「平太」
「……ん? どうした薫」
と平太は薫を見る。
薫は、ちょっと目をさまよわせてから、
「ぼくにできることがあったら、いってね!」
と提案する。
「お、おお……」
「平太お兄ちゃん! あたし、平太お兄ちゃんのミカタだから!」
「わたしも……!」
と彩と杏も平太を見上げて言う。
「あ、ありがとな──」
平太は、三人の何ともいえない視線を受けながら、何だ? と少し首を傾げるのだった。
「はい、お待たせ──」
と初枝が長方形の箱を持ってきた。
中は仕切りがあり、様々な種類のチョコが入っていた。
「スッゲー! いっぱい!」
と辰が目を輝かせる。
「すごいでしょ? 分けるから、ちょっと待ってね──」
と初枝は平等に分けていく。
四人は、今か今かと分け終わるのを待っている。
平太は、どこかぼんやりしている。
「……平太くん?」
「ぇ……あ、はい」
「大丈夫? はい──」
と初枝がチョコを渡す。
「あ……すいません。ありがとうございます──」
平太は受け取って、チョコを口に入れた。
「……甘い──」
『おいしい!』
「ふふ。でしょ? 辛いこととか、全部忘れられる気がするでしょ?」
「……はい──」
と平太はチョコを見つめて微笑む。
それを見た辰が、自分のチョコを見つめてから、平太に一つ渡した。
「……辰?」
「おれの、チョコあげる。平太、げんきだせよ!」
「ぼくもあげる!」
「あたしも」
「わたしも」
平太の手元には、四つのチョコが集まった。
「なんだよ……優しいな……」
と平太は苦笑いする。
「だって、平太くんさっきため息吐いてたし……何かあったのかなって──」
「ため息……? ああ、ため息吐いてたのは、明日小テストがあるからですよ。嫌だなぁと思って……」
心配させてすいません……//と、平太は照れたように頭を掻く。
「じゃあ、辛いこととかあるわけじゃないの……?」
「はい。ないです」
「そうなのね、ならよかった──」
ほっとしたように初枝は微笑む。
だが、辰は納得できないようで、
「じゃあチョコかえせ!」
と平太のチョコを一つ奪い返す。
「あ、何だよ辰!」
「おれのだもん!」
「じゃあぼくも──」
「あたしも!」
「わたしも」
平太の手元から、チョコが消えた。
「ああああ! 辰と彩余計にとったろ!」
「ろって、ふぁいお」
「うん、ろってふぁい」
と二人は口を押さえながらもぐもぐしている。
「食ってんじゃねえか!」
と平太は怒る。
「平太お兄ちゃん──」
「ん?」
杏は自分のチョコを一つ、平太の前に置く。
「はい。彩ちゃんが、たべちゃったぶん」
「辰が……たべちゃったぶん……//」
と薫も一つ置く。
「杏、薫……ありがとな。でも、自分で食べろ──」
気持ちだけで十分と、チョコを返す。
「なら、おれがたべるぞ」
「お前は食ったろうが!」
「じゃあ、あたしがたべる!」
「彩も食べてただろ──」
いつも通りの平太たちのやりとりを見て、初枝はよかったと小さく笑みを浮かべるのだった──
休日投稿です。
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