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サッカーやろうぜ!

辰はつまらなかった。

 今日は天気もよく、保育ルームにいるのが勿体ないくらいだ。


平太(へいた)〜つまんない!」


 と(たつ)が地団駄を踏む。

 平太は(かおる)(あん)(あや)と本を読んでいた。


「つまんないってったって、ヒーローごっこはやんないぞ」

「なんでー?!」

「さっき決めたばっかだろ。今日は本読むって──」


 さっき、多数決で決めたばっかだ。

 初枝(はつえ)は、窓の外を見ている。


「えー……つまんないつまんないつまんないつまんないつまんないつまんない」

「うるせえよ!」

「辰うるさい」

「しずかにして!」

「辰くん、シー」


 一斉に四人が辰に注意する。

 辰はムッとした顔になり、初枝のもとに行く。


「せんせー……」

「あら。辰くんどうしたの?」

「つまんない……みんなほんよんでる──」

「そうねぇ。そしたら辰くんには楽しくないかもね」


 と初枝は辰を撫でる。

 そして、窓の外を見ると、明良(あきら)がちょうどこっちにボールを取りに来ていた。

 明良はサッカー部に所属している。


「明良!」


 と辰が窓越しに叫ぶ。

 それに気づいて明良が近づいてくる。


梅田(うめだ)せ……じゃなくて、梅田さん」

「ひさしぶりね。明良くん」


 窓を開けて初枝が笑う。

 辰が明良に声をかける。


「明良! ボールかして!」

「ボール? まあ、いいけど。俺部活まだあるんで、終わったら平太に渡して返しに来させてください──」


 と辰にボールを渡して初枝に言う。


「わかったわ。頑張ってね」

「はい」

「明良ありがとな!」

「おお──」


 と明良は笑って戻っていった。

 辰はさっそく四人の所にボールを持っていく。


「平太! サッカーやろうぜ!」


 平太たちが辰を見る。


「……どっから持ってきた?」

「明良からかりた!」

「終わったら、返しにきてって言ってたわね」


 と初枝もくる。


「明良から? てか俺が!?」

「そう──」


 と初枝が頷く。

 平太は何で貸したんだよ……と思いながら辰を見る。

 辰はやる気満々らしく、うずうずし始めている。


「みんなでサッカーやろうぜ!」

「やりたい」

「あたしも」

「わたしも」


 と三人も頷く。


「じゃあ、皆で外行きましょ──」


 初枝は笑って外に行く準備を始める。

 平太も仕方なく準備を始めた──


         *


「平太パース!」


 校庭の端で、皆で円になる。

 初枝は外れで見守っている。


「行くぞー。ほい辰──」


 軽く蹴って、辰にパスする。


「よーし。薫パース!」


 辰が薫に向かってボールを蹴る。

 ボールはポーンと薫の前に転がっていく。


「ナイスボール……! 平太!」


 と薫は平太に蹴る。

 コロコロと平太の前で止まる。


「ほい。彩ー」


 と平太が彩にボールを蹴る。


「はい! 杏ちゃん!」


 彩から杏にボールが渡る。


「はい……っ!」


 スカッと杏がボールを蹴り損ねた。


「あ──」

「大丈夫よ。ほら──」


 とちょうど初枝の方にボールが行ったので、初枝が蹴り返す。


「ありがとうございまーす──」


 戻ってきたボールをまた同じようにパスをして回す。

 それを何回も繰り返した。

 何回かやると楽しくなってくるもので、四人の間にサッカーブームが到来した。


 そして、小さな選手が校庭の端でボールを蹴っていて可愛い。という話題が、少しの間サッカー部で広がったのだった──



遅くなりました(_ _)/

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