遊びたい!
子どもたちの思ってることは、一緒のようです。
「かぞくごっこ!」
「ヒーローごっこ!」
「かぞく!」
「ヒーロー!」
平太が保育ルームに入ると、辰と彩が言い合いをしていた。
「何だ? 喧嘩か?」
「遊びを決めてるのよ。今日は何をするか」
テーブルに座っていた初枝が答えた。
平太は鞄を置きながら頷く。
「なるほど──薫と杏は……?」
平太は部屋を見渡して、薫と杏がいないことに気づいた。
「薫くんは、隣の部屋で読書。杏ちゃんは、ちょっとお昼寝中──」
「そうですか……」
と平太は改めて辰と彩を見る。
二人は譲る気がないのか、睨み合っている。
「決まるんですか? あれ」
「昨日は早かったけど……今日は遅いわね。平太くんからも何か提案してみたら? そしたら決まるかも」
と初枝は、ふふっと笑う。
平太は少し考えてから、そうですね。と辰たちの前に行った。
「かぞく!」
「ヒーロー!」
「まあまあ、落ち着けよ。ここはジャンケンで……」
「あたしまけるからヤダ!」
「おれサイキョーだからな!」
「あ……そう──」
フェアに決めたいのね……と平太は考える。
そして、思いついたように隣の部屋に向かった。
「薫──」
「平太! ……ほ、ほんよんであげてもいいぞ──//」
チラリと平太を見てから、顔を背ける。
平太はそんな薫を後ろから抱き上げて、手に持っていた本を棚にしまった。
「なっ//?! 平太!?」
「ちょっと、力貸せ」
「へ//?」
抱き上げられたまま、薫は平太に連れて行かれる。
ちょっとだけ嬉しく思っていたが、すぐに下ろされたので、少し残念な顔になる。
もちろん、平太は気づいていない。
「薫は、家族ごっことヒーローごっこ、どっちがいい?」
「ヒーローだよな! カッコいいもんな!」
「かぞくごっこだよ! ね?」
辰と彩が薫を見つめる。
薫は突然のことに驚いたが、二人の顔を見比べて考える。
「えっと……ぼくは……」
薫は平太を見る。
平太は、ん? と首を傾げる。
「ぼくは……っ──」
キュッとズボンを握りしめて、言おうとした時──
「杏」
平太が起きてきた杏に気づいて、声をかけた。
その声に反応して、杏が目をこすりながら近づいてくる。
「杏は、ヒーローごっことかぞくごっこだったら、かぞくごっこだよね!」
「ヒーローだよな!」
辰と彩は勢いよく杏に訊く。
「ふぇ?」
杏はまだハッキリしていないらしく、目をシパシパさせている。
そして、ゆっくりと辰と彩の言ったことを頭の中で反芻してから、杏はニコリと笑って、
「どっちでもいいよ──」
と言った。
その答えが気にくわなかったのか、辰がプクッと頬を膨らませて、険しい顔つきになる。
「杏はいつもどっちでもっていうから、こたえにならないんだよなー」
「どっち? 杏ちゃん──!」
「えっ……わ、わたしは……っ……」
杏の目が、だんだん潤んでくる。
平太はそんな杏の頭を撫でて、
「泣くなよ。はっきり言わなきゃ、伝わんないぞ」
と慰める。
杏は、平太を見上げてキュッと口を閉めてから口を開いた。
「わたしは……っ、みんなとあそべたら、それでいい……!」
平太は少し笑って辰と彩を見る。
二人は、ちょっと申し訳ないという顔になる。
「ぼくは……」
と黙っていた薫がさっき言えなかったことを口にする。
「ぼくは、平太と……みんなとあそびたい……//!」
そして辰と彩は、薫のその一言にハッとなり、平太を見る。
「なんだよ」
「平太!」
「平太お兄ちゃん!」
「「あそぶ!」」
と辰と彩が平太の手を取る。
「は? へ?」
「みんなであそぶ! 平太なにしたい?」
「なにしたい?」
「え? ちょっ……」
戸惑う平太を気にせず、薫と杏も平太の手を取る。
「平太なにしたい//?」
「平太お兄ちゃん……!」
「ええ? 何って……」
平太は何も思いつかず、笑ってごまかす。
「お前らがやりたいことやろうぜ、な?」
「平太はあ?」
「俺はいいんだよ──!」
そう言われたあとも、辰たちは平太の手を離さなかった。
そして、遊びを決めるのに結局倍の時間を費やし、遊ぶ頃には皆疲れていたのだった──
休日投稿です。お知らせまで(_ _)




