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第12話 死闘!キンググリフォン!

==========

 <警告!>

 ≪キンググリフォン≫は【王威咆哮】を唱えている!

 強靭な精神を持たぬ者はその場で理性を失う!

==========


「いってぇ……なんだ!?」


 暴風でいきなり吹き飛ばされて倒れたところに、そんな警告がやってきて、俺は思わずフリーズする。


「っ……! 【縛りプレイ:思考停止】!」


==========

【思考停止】

制約:文字情報による思考を禁止する

バフ:精神+200%

==========


 火咲が一瞬の判断でなにか縛りプレイを詠唱したようだが、その次の瞬間には【王威咆哮】がやってくる――


「ぎぅぃあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


==========

≪キンググリフォン≫の【王威咆哮】!

 ≪ひさきちゃんねる≫は強靭な精神でレジストした!

 ≪キョウスケ≫は強靭な精神でレジストした!

 ≪アストレア≫は【恐慌】+500%に陥った!

 ≪ツキト≫は【恐慌】+100%に陥った!

 ≪ベルフェアリーガール≫は強靭な精神でレジストした!

==========


 凄まじい音圧、凄まじい恐怖感に、懸命に耐えきる。だが、どうやら火咲以外の二人は状態異常にかかってしまったらしい。


「い、いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 【火炎射出】【火炎射出】【火炎射出】【火炎射出】【火炎射出】【火炎射出】【火炎射出】【火炎射出】!」


 一瞬で恐慌状態に陥ったアストレアが、完全に正気を失った叫びをあげながら、恐怖のままに【火炎射出】を連打している。


 だが――


「ぎゅぃああおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


==========

≪キンググリフォン≫の【風王防壁】!

 脆弱な魔術はすべて【ノーダメージ】になる!

==========


 くるくると逆巻くような風のバリアがキンググリフォンを包み込み、アストレアの必死の攻撃はすべて無傷で跳ね返されてしまう。


「火炎射出……えっ……!? 魔力がっ! 魔力がないぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! いやぁああああああああああああああああああああああ! 死ぬぅうううう! 死んじゃうぅううううううううううううううう!!」


 アストレアはあっという間に魔力を使い切ってしまったようで、なにも出来ないまま叫び続けている。


 そして、そんな脆弱性をこのキンググリフォンが見逃すはずもなく――


==========

 <警告!>

 ≪キンググリフォン≫の【風王刃裂】!

 備えよ! 致命的に強烈な攻撃が襲い来る!

==========


「っ……! 【縛りプレイ:接触禁止】!【縛りプレイ:流動限定】!【流動空気】!【流動地面】!」


「助かるっ……!」


 火咲が縛りプレイからの精密な魔術操作で、空気の壁と土の壁を自身の目の前に生み出した。俺は素早さ値30の反射的挙動で、近くにいたこともありなんとかその壁に滑り込む。


「【位相移動】」


 ――と、次の瞬間、アストレアと同じく恐慌に陥っていたはずのツキトが、瞬間移動魔術らしきものを唱えて火咲の後ろに移動していた! やるなっ!


 だが、恐慌状態で魔力も尽きたアストレアを救う方法はなく――


 荒れ狂った風の猛刃がズタズタに彼女の身体を引き裂き――


==========

<プレイヤー:アストレア>が死亡しました!

==========


 当然、攻撃を受けるのはアストレアだけではなく、凄まじい風圧が壁ごと俺たちを吹き飛ばしそうな勢いで襲い来るのを、必死に耐える。


「はぁあああああああああああああああああ!」


 火咲が、必死に全力で魔力を込めて壁を維持する。


 最終的に、火咲の土の壁と風の壁は音を立てて破裂したが、なんとか攻撃のすべてと相殺されたようだ。


「はぁ……はぁ……まずいっ! 今ので完全に魔力がつきちゃった!」


「これは……さすがに絶望的か……」


 目の前には、無傷のままのエピックモンスター≪キンググリフォン≫が、堂々とした王威で山のように立ちはだかっている。


 死んだか……?


 ――と、そこで一つ気付いたことがあった。


 俺の横に立つ≪ツキト≫が……平然と、微笑んだままなのだ。


 なんだ、こいつ……?


 状況が分かってるのか……?


 そう思ってツキトを見ると、ツキトは微笑みを崩さないまま、突然こんなことを言い始めた。


「≪キョウスケ≫、30秒時間を稼いでほしい」


「は?」


「30秒、僕をフリーにしてくれれば、あいつを殺せる」


「はぁあああああ!?」


 いきなり何を言ってるんだ?


 あの化け物を、殺せる? そんなバカなっ!


 当然否定したくなったが、頼みの火咲も魔力が尽きた今、四の五の言っていられる状況ではないことは確か。


 ここは、猫の手でも借りるしかない! 藁にだって、縋らざるを得ないタイミングはある! それが今だ!


「【物質射出】」


 と、ツキトは俺の返事を待たず、【物質射出】で石の槍を垂直に上に向かって飛ばし始めた。


 何をしているんだ、こいつは?


 こんなのであいつを倒せるわけ……


 いや、いったん縋ると決めたのだ。俺は俺の仕事をするべきだ。


「いくぞ、ベル! 全力で時間を稼ぐ!」


「わたしとご主人様のっ、祝福すべき晴れ舞台ですねっ♡」


「わたしは逃げる! 信じるよ!」


「うおおおおおおおお! 【数値移動:頑丈】!」


「【流動地面】♡【妖精鐘:タロットベル】♡――からのー、【妖精の踊り】♡」


 火咲はその身体能力で素早くその場を離脱。俺はベルから頑丈を移動させ、頑丈値を44にまで強化。一撃は耐えられそうな耐久値を確保しつつ、ベルの【流動地面】に乗って完全にベル任せの機動力を得る。大丈夫だよな、ベル……?


 一方のベルは自らのエピックスキル【妖精鐘:タロットベル】を鳴らしながら、【妖精の踊り】なるスキルを使って……結果、なんと7つに分身した!


「あははっ♡ ご主人様にいいところを見せて、メロメロに惚れさせちゃいますよ♡」

「ご主人様に一番いいところを見せるのはこっちのベルですよっ♡」

「【妖精占い】♡」

「【流動空気】♡」

「【妖精の粉】♡」

「【流動空気】♡」

「【流動地面】♡」


 7体のベルは、若干2体がセリフを言うだけで何もしていないが、5体が魔術を唱えて、【流動空気】でバラバラに高速移動しながら【流動地面】で俺の身体を移動させ、【妖精占い】なる占いをしながら【妖精の粉】が【流動空気】でキンググリフォンの方に舞い散る。


==========

<妖精占いの結果が出ました!>

 1秒後、全力でしゃがまないと死にます!

 3秒後、【妖精の粉】でキンググリフォンは【混乱】+30%!

 29秒後、キンググリフォンは致命的ダメージを受けます!

==========


「ちょ……!」


 表示が視界に出た瞬間、俺は全力でしゃがんだ!


==========

 キンググリフォンの【暗殺風刃】!

 見えない必殺の刃を≪キョウスケ≫は回避した!

==========


 いつの間にかヤバすぎる攻撃を受けていたが、ベルの占いと素早さ30の反射力で図らずも神回避していた。


 そして、妖精の粉がキンググリフォンに吸い込まれていき……


「ぴゅいああああああ!?」


 突然、キンググリフォンがあらぬ方向に風刃を飛ばし始める!


 荒れ狂いすぎてこっちにまで飛んでくるが、思いのほかベルの【流動地面】が上手なおかげか、それともただ運がいいだけなのか、こちらには命中しない。いや――これは避けられっ……!


「ぐああああっ……!」


 頑丈44の耐久があってなお痛すぎる風刃が、俺の胸に命中し、鮮血が舞う。うおおおお、いてええええええ!


 だが、そうこうしているうちに、なんとか20秒ほどが経過する。


 そして、頼みの綱の≪ツキト≫の方を確認すると――


 ――≪ツキト≫に、後光が差していた。


「え……?」


 よく見ると、なにかとんでもない速さの物体が、ぐるぐるとツキトの背後の上空を回転している。


「【速度倍増】【魔術反復】【魔術反復】【魔術反復】」

「【速度倍増】【魔術反復】【魔術反復】【魔術反復】」


 ログに残っているこれまでの詠唱を見て、俺はようやく≪ツキト≫が何をしているのか朧げに理解した。


 ツキトは、【速度倍増】なる数学魔術を、【魔術反復】なる数学魔術でコピーして、そのコピーをさらにコピーして、そのまたコピーをさらにコピーしているのだ! しかも、最初に【位相変換】なる魔術でその軌道を回転型にしているから、後光のように見えているらしい。


 加速しているのは、もちろん最初に上空に飛ばしていた【物質射出】の石の槍。


 ツキトが4つの魔術を詠唱するたびに、速度は2の4乗で16倍になる。4つで一区切りなのはおそらくクールタイムか魔力の関係、あるいは何らかの制約があるのだろう。


 それを、ツキトは5秒に1回、ぐるぐると繰り返している。


 仮に――それが30秒間、6回繰り返されたとしたら……?


 《《いったいあの石の槍はどれほど早くなるんだ》》……?


 その答えが、まもなく示される――!


「【位相変換】」


 その詠唱の瞬間――


 突如、≪ツキト≫の背景の後光が消えた。


 そして、同時――


 ミサイルでも着弾したような凄まじい衝撃が、爆風となって全てを吹き飛ばした。


 巨大なキノコ雲が、キンググリフォンを中心に立ち上がる。


 ただの石の槍が、まるで核爆弾でも落としたような惨憺たる破壊を引き起こしていた。


 そして、この戦いは――


==========

 <エピックイベント:≪キンググリフォンの怒り≫クリア!>


 鷲獅子王を討伐した英雄に祝福を!

 ≪キンググリフォンの爪≫が4つドロップした!

 ≪鷲獅子王の巨大魔石≫がドロップした!

 ≪【暗殺風刃】の理論書≫がドロップした!

 ≪風王剣≫がドロップした!

 生存者のプレイヤーポイントが+3されました!

==========


 ――俺たちの、勝利だ!


「あれ……?」


 ――と、俺は思ったより血を失いすぎていたらしい。


 ふらっと気が遠くなった俺の意識は、ゆっくりと地面に沈んでいったのだった――

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