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第11話 ベビーなんちゃらが出て来た時のお約束

「いたね」


「あれがベビーグリフォンか……どこがベビーだ?」


 ツキトが指さした方をみると、いったいどこがベビーなのか分からない熊ほどの大きさのグリフォンがいた。


 子供であれなら、成体はさぞかしでかいんだろうな。


 ゲームのお約束だと、子供のモンスターが出てきたら親のモンスターも近くにいて助けに来たりするものだが、さすがに最序盤のクエストでそうそうそんなことは起きないだろう。


 お約束といえば、こういう子供のモンスターをテイムできたりする展開も定番だ。火咲は契約魔術が使えるし、そういうのを狙ってみるのも面白いかもしれないな。


「火咲、あれテイムできると思うか?」


「チャンスはあるけど、弱らせた後動きを止めて、好物とかを上げる必要があるね。一応、念のため巨大肉は買ってきてるよ」


 さすがに火咲のゲームに関する有能さは並のものではなく、ばっちりそうした想定もしているようだ。


==========

 <アンコモンイベント:≪ベビーグリフォンを討伐せよ≫!>


 ベビーグリフォン発見!

 クリア条件:ベビーグリフォンの討伐、ベビーグリフォンの逃走、ベビーグリフォンのテイム!

==========


 ご丁寧にクリア条件も表示された。逃がすだけでもクリアになるらしいが、こういうゲームでは、逃がした場合報酬が少なくなるなんてのもあるかもしれない。できれば討伐、あるいはテイムしたいところだが――


 と、そこでアストレアが早速向こうが気付く前に先制攻撃を仕掛ける。


「【火炎射出】!」


 炎の槍がアストレアの構えた魔道槍から高速で発射され、ベビーグリフォンの右翼に着弾する。


「いいね! ≪火炎≫の式をもう持ってるんだね!」


「ああ! わたしはβ組でねっ! 【火炎射出】!」


「【物質射出】」


 アストレアが追撃の火炎槍を放ち、ベビーグリフォンは避けようとするが初撃で翼を潰していたのでうまく飛べない。胴体に命中した火炎が、派手にベビーグリフォンに傷を負わせる。


 同時にツキトも物質射出で土の槍を発射し、器用にベビーグリフォンの右足を刺し貫く。


「ぴゅいぇええええええ!」


 ベビーグリフォンが派手に叫び声をあげ、ばさばさと左の翼をはためかせ、無理やり飛ぼうとする。どうやら逃げようとしているようだ。


「【生命強化】」


 俺はベビーグリフォンの足元の木の根に【生命強化】を使い、初級研究実習で見かけた生命魔術師の真似をして、木の根でベビーグリフォンを拘束する。


「【縛りプレイ:常時浮遊】!」

「【縛りプレイ:流動限定】!」

「【流動空気】!【流動地面】!【流動空気】!」


==========

【常時浮遊】

制約:常に地面に直接触れてはいけない。

バフ:魔力+150%


【流動限定】

制約:流動魔術以外の使用を禁止する。

バフ:魔術制御+100%

==========


 火咲がプロゲーマー志望らしい鮮やかなスキルコンボで、自らにバフをかけ、流動空気で飛び上がって宙を舞い、グリフォンに急接近しながら【流動地面】で木の根ごとグリフォンをひっくり返し、その柔らかそうな腹に、再度使用した【流動空気】で爆発したように突撃し――


「【縛りプレイ:一撃必殺】!」


==========

【一撃必殺】

制約:一つの敵につき一度しか直接攻撃できない

バフ:力+300%

==========


「ピュィアアアアアアア!」


 火咲のまるで爆発したような必殺パンチは、ベビーグリフォンに大穴を開け、断末魔を上げたベビーグリフォンは、無事死亡した。


「【縛りプレイ】解除! ふぅ、楽勝だったね。テイムはできなかったけど」


 火咲は鉄環を消して地面に降りてくると、一息ついて、そんなことを言った。


「だな。まあ序盤のちょろいクエストなんてこんなもんか」


 俺はあまり活躍できなかったが、まあ目立ちすぎるのもあれだし、ちょうどいい顛末かもしれない。


 そんなことを思っていたが――


 ――平和だったのはその瞬間までだった。


==========

 <警告!>

 <エピックイベント:≪キンググリフォンの怒り≫発生!>


 子を殺された王の怒りを知れ!

 エピックモンスター:鷲獅子王≪キンググリフォン≫が襲来する!

==========


「はぁああああああ!? なにこれ!?」


 アストレアが英語で何と言っているのか分かる気がする叫びをあげたのと同時――


「ぴぅいああああああああああおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 先ほどとは比較にないほど大きな、グリフォンの鳴き声が天から降ってくる。


「親が襲ってくるところまではお約束だと思っていたが……まさか王様が降臨するとはな」


 そうして、まるで豪邸のような大きさの≪キンググリフォン≫は、バサバサと翼から暴風を吹き荒れさせながら――

 ――風に吹き飛ばされて倒れ伏す俺たちの前に、ド派手に舞い降りたのだった。


 ――死闘が始まる。

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