隣国王太子の一目惚れ※ウィリアム視点
私の名はウィリアム。レイディアント王国の王太子をしているがその事は良い。
私には好きな女性がいる。
彼女の名はソフィア・オズワルデスタ。
隣国フール王国の公爵令嬢である彼女と出会ったのは五年前にレイディアントにて催された舞踏会だった。
フールから招待したのは向こうの王族とその関係者のみ。公爵令嬢であるソフィアが来た理由は王太子アーサーの婚約者であったから。
当時は十三歳とまだ少女と言っていい年齢だったソフィア。緊張しているはずだ。なにか失敗があったとしても広い心で受け止めるつもりでいたが完全に杞憂に終わった。
彼女は誰が見ても完璧な淑女だった。
会場にいるレイディアントの女性貴族よりも、誰よりも淑女らしい淑女。
完璧に挨拶をして見せた彼女に見惚れていたのは俺だけじゃなかったと思う。
「羨ましいな」
ぽつりと零れ出た言葉に自分で驚いた。
何かを羨んだり欲したりする事はなかったのは恵まれた環境にいたから。
アーサーが羨ましい、ソフィアを欲しいと願ってしまった。
彼女の婚約者がアーサーでなかったらすぐにでも奪っていたかもしれない。
いわゆる一目惚れというやつだった。
アーサーとのファーストダンスを見事に終えた彼女に近づいてダンスを申し込むと驚いたのか一瞬だけ年相応な彼女が顔を見せた。それすら愛らしいと感じる自分に笑ってしまいそうだ。
「私でよろしければ」
私の手に重なった手は小さな物だった。壊れてしまわないようにそっと包み込み細い腰に手を回せばふわりと優しい香りが舞う。
好きだ。
ダンスの最中に何度そう言いかけた事か。
ソフィアと踊るダンスは楽しかった。かなり練習をしたのだろう。それが分かるくらい彼女は踊りやすい相手だった。
レイディアントの言葉を正しく話せていたり、こちらの礼儀やルールを完璧に身につけているのも好ましかった。会話の中で教養の高さも伝わってくる。
まだ十三歳の女の子だ。王太子の婚約者として相当努力したのだろう。その努力を悟らせないようにしているのがいじらしく愛らしかった。
「ソフィア嬢、また踊ってくれるか?」
「機会がありましたら」
私から離れていくソフィアに駆け寄ったのは彼女の婚約者であるアーサーだった。
仲が良さそうに話す二人を見ていたら心が痛くなる。
侍従であり親友でもあるチャーリーにその事を相談すると大笑いされた。
「堅物王子のお前が一目惚れなんて笑えるわ」
「放っておけ」
「まぁ綺麗な子だったからな」
貴族の子女であるチャーリーもあの会場にいた。だから私と踊る彼女を見ていたのだろう。
「アーサー殿下の婚約者か。流石に婚約者にするのは難しいだろうな」
「分かっている。だから諦めるつもりだ」
「気の迷いかもしれないし深く考えない方がいいぞ」
綺麗な子に浮かれていた。
そう思われるのは仕方ない事だ。彼女への想いが気の迷いでない事はよく分かっている。
ソフィアの生まれがフール王国でなければ、自国の公爵令嬢であれば良かったのに。
そう思わずにはいられなかった。
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