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真実の愛ですか?笑ってしまいますよ  作者: 高萩


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隣国の人との出会い

アーサーとストーン伯爵令嬢の婚約話を聞いてから数日。私の頭からは二人の事は抜け落ちていた。結末だけ知る事が出来たらそれで良いのだ。


今日は兄の代わりとして町に出る日だ。

目立たないように質素なワンピースに着替えて、目立つ金髪は茶髪のウィッグを被って誤魔化す。護衛はいるが遠くから見守るようにしてもらっているので実質一人歩きのようなもの。

町に出ると相変わらず活気に溢れており、私の胸を躍らせるには十分な光景が広がる。

今日はどこに行こうか悩んでいるときょろきょろと辺りを見渡す男性が見えた。

この町では初めて見る顔だ。

黒髪に紫色の目をした彼は整った顔立ちをしており、背も高い為、周囲の女性の視線を独り占めしていた。

それは良いとしてなにやら困っている様子だ。


「あの…」


後ろから声をかけると男性は体をびくりとさせる。驚かせてしまったみたいだ。

振り返った彼はやはり綺麗な顔をしていた。


「なにかお困り事ですか?」

「え、あぁ。少し道に迷って」


照れ臭そうに笑う男性の手には町の地図があり、いくつか印が付けられていた。

おそらく観光客なのだろう。

この町は入り組んではないが慣れていないと自分の位置を見失ってしまう傾向にある。彼が道に迷ったのもそのせいだろう。


「私でよろしければ案内しますよ」


ちらりと護衛を見て確認すると静かに頷いてくれた。なにか問題があればすぐに駆けつけてくれるだろう。


「本当ですか?助かります」


手を握られて上下に振られる。

こんな事をされたのは弟以外で初めだった。

気さくな人なのだろうと笑ってしまう。


「私はソフィです」

「ウィルです、よろしくお願いします」


僅かだけどウィルの話し方は隣国レイディアント王国の癖が入っている。

そちらからやって来た人なのだろうか。それにしてもこの国の言葉が上手だ。

どこかで習ったとしたら貴族である可能性が高い。もしそうだったとしても正体を隠しているのはお互い様。詮索はしない方が良いだろう。


「どちらに行きたいんですか?」

「この店に行きたいと思っているのですが場所が分からなくて」


ウィルは地図に付けられた印に指を差して教えてくれる。見てみると彼が行きたがっているのは近くにあるケーキ屋さんだった。

甘い物が好きなのかしら。

好みは人それぞれなので男性が甘い物を食べるなと言うつもりはないが驚きはする。


「分かりました。こちらです」

「もっと気軽に話してくれて大丈夫ですよ?同い年くらいですし」

「でも…。いえ、分かったわ」


平民同士であるならば気軽に話すべきだろう。町の住民たちもよくそうしている。

どうせ今日くらいしかまともに話す機会はないのだから問題ないだろう。


「私も普通に話して良いですか?」

「えぇ、勿論」

「良かった。実はあまりこちらの言葉にはなれていないんだ」

「やっぱりレイディアント王国から来ていたのね」

「気づいていたのか」


答えると目を大きくして驚かれる。

そこまで驚かれるような事を言ったつもりはないのだけど。ウィルからは「どうして分かったんだ?」と尋ねられてしまう。


「話し方に癖があったから?」

「出したつもりはないのだが…」

「そうかしら?」

「聞き分けられるとは君は優秀なんだな」


目を細めて嬉しそうに笑うウィルはどこかで見た事があるような顔をしていた。

もし彼がレイディアント王国の貴族だとしたら会っている可能性は高い。次期王太子妃として向こうの舞踏会に何度も招かれたからだ。


「ソフィはレイディアントに来た事があるのか?」

「何度か…」


言ってから失敗したと思った。

普通の平民が他国に行く事は滅多にない。これでは貴族だと言っているようなものだ。


「そうか、私はあまり国から出られなくてな。久しぶりにこっちに来たよ」

「忙しいのね」


詮索されないのは詮索してほしくないからだろう。それなら私としても助かる。

話しながら歩いていると目的のケーキ屋に到着する。お客様は女性ばかり、男性は一人も居なかった。

大丈夫だろうかとウィルの様子を伺うと彼は店頭に並ぶケーキを嬉しそうに眺めていた。どうやら女性客ばかりなのは気にしないらしい。

ウィルは甘い物に目がないのね。


「ソフィはケーキ好きか?」

「えぇ、好きよ。一番は好きなのはショートケーキね」

「俺はチョコレートケーキだ。良かったら一緒にどうだ?」


貴族ならあまり関わらない方が良さそうだけど。他国の貴族相手になにか問題でも起きたら公爵家が責任を取る事になるだろう。

だったら見張りついでに観光案内をした方が良さそうだ。


「ご一緒させてもらうわ」

「美味しい物は誰かと一緒に食べた方が美味しいからな」

「そうね」


悪い人ではなさそうね。

ケーキを前に浮かれきった彼と話していると店員がやって来て奥のテラス席に案内される。男性客に対する配慮なのか店内からは見えにくい位置の席だった。


「気を遣われたのだろうか」

「おそらく」

「そうか。いい店員だな」


そう笑ってウィルは紅茶を口にする。

洗練された動作や背筋の伸び方からして彼は貴族で間違いない。それもかなり高位の貴族だろう。

そうなると彼が言った国から出られないというのも仕方のない事だ。私も公爵令嬢の身として他国の行く事は制限をかけられているから。


「飲み方、綺麗だな」

「お互い様です」

「そうか。そうだな」


クスクスと笑うウィルはやっぱり私が貴族だと気がついているようだ。紅茶の飲み方ばかりは染みついた癖が出てしまうから仕方ない。

それに普段は一人で回る事が多いから隠す事に慣れていないのだ。


「早くケーキが食べたいな」

「そうね」


二人揃って紅茶を口にした。

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