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ナンダロネの冒険譚  作者: なんだろね


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「私があいつを引きつけるからナンダは布で隠れながら、あいつが守っている宝物を見つけ出して」

「了解、あいつはこの広場から出ることはないだろうから、やばくなったら通路の方に出てね」

「うん、わかった」

「じゃあ合図で作戦開始ね」


 そう言って俺たちは心鏡を構えなおした。


「せーの」


 ロネの掛け声で俺たちは一気に駆け出した。


 ロネは一直線にわざとイーストンの目の前まで行き、俺が隠れやすいようにイーストンの目線を釣っていた。


 俺は心鏡の布で自分を包み込み、布を背景と同化させ周りから身を隠した。


 イーストンはロネを長い手足で攻撃していたが、ロネは自身の心鏡である大鎌で弾いたり、受け流したりしていた。


 ロネがイーストンの気を引いている内に俺は先ほどまでイーストンが立っていた位置まで行き、あたりを散策していた。


 宝物はすぐに見つかった。イーストンの巨体で見えなかったが50cmはある巨大な黄金に輝く卵があった。


「なんだこれ」


 俺は予想していなかった光景にうっかり声を出してしまった。


 通常、魔物は繁殖をすることはなく、魔力の濃度が高い場所に素体となる何かが合わさることによって特殊な能力を持った生き物が作られるというメカニズムだ。例えばドッペル面は石英や石灰でスライムは水、イーストンは石や岩などが素体となって発生していると考えられているのが一般常識なはずなんだけどな。


 魔物が宝物のように守っているのが卵だったのも驚いたが、黄金に輝く卵というものが存在していた方が驚きだった。だが、これでイーストンの宝物はこの卵であるとあたりをつけることができるため、この卵を見せつけながら洞窟の外に出る準備を始めた。


 俺は自分に巻き付けていた布を解除し、代わりに黄金の卵に布を巻きつけた。背景と同化して浮遊させ、ひとまず通路の入り口まで音を立てずに移動する。


 イーストンはというとロネと戦うことに集中しており、黄金の卵が盗まれたことに全く気づいていない様子だった。


 ロネは俺が通路の方まで引き返したのを確認して目配せをすると、イーストンに目もくれずこちらに向かって走ってきた。


 イーストンはロネが通路の方まで全力で逃げているのを途中まで追ったものの、宝物が気になるのかそれ以上は近付いてこず、こちらを睨みつけて威嚇を続けていた。


「ナンダ、宝物は見つかった?」

「うん、ばっちし、多分ロネも見たら驚くと思うよ〜」

「それは楽しみね」

「じゃあ——ここからが本番だよ、逃走劇を始めようか」

「了解」


 ロネの返事が返ってきたのを確認して背景に同化させている能力を解除し布を少しめくって、黄金の卵が入っていることをイーストンに見せつけた。


 イーストンは初めはただ見ているだけだったが、数秒の後、振り返った自分の後ろに黄金の卵がないことにようやく気づき、怒り狂ったのか全速力でこちらに走ってきた。


「よし、引っかかった」

「私が殿ね」

「頼んだ!」


 そう言って、俺たちはイーストンに追いつかれないよう、洞窟の出口を目指して一気に駆け出した。


 イーストンは動きが遅いため全速力といっても俺たちに追いつく気配はなかった。しかし、イーストンもそれに気づいたのか通路に大量にある魔石を取り出し俺たちに投げてきた。


「ドゴォォン!」


 幸い魔石はロネの手前あたりで砕け散っていたが、その破片がロネの頬や足を傷つけていた。


「大丈夫!?」


 俺はこのくらいではロネはなんともないとわかっているが心配になり走りながら確認した。


「問題ないよ、油断してたわ」


 ロネはそう言いながら鎌の大きさを変えて半分くらいの長さにしていた。


「魔石は投げられたら二つに切るから私の直線上にいてね」


 ロネはそう言い終わると、イーストンが投げてきた魔石を鎌を振り真っ二つにしていた。


 ロネの心鏡は鎌を作り出し、遠隔の斬撃を放つことができる。大きさによって斬撃の威力が変わるのだが、大きさに比例して重さも増していく。そのため、あまりに巨大な鎌は重すぎて振れなくなるらしい。


 俺たちはイーストンに追われながらしばらく逃走劇を繰り広げ、ようやく目の前の分かれ道までたどり着くことができたが、前方をスライムが邪魔していた。


「あ〜、忘れてた!こんなことなら凍らせとけば良かったな〜」


 俺は呑気にそんなことを溢していたが、イーストンに俺たちを見失わせないよう一定の間隔で追わせていたため、あまり時間がなかった。


「私に任せて」


 そうロネがいうと心鏡を通路の高さでもギリギリ振れるほどの大きさにしていた。その分増した重量に、少し重心をぶれさせつつもスライムに向かって思いっきり斬撃を飛ばしていた。

 

 すると、スライムが溜まっていた底の岩石が斬撃によって地割れし、液体がその穴にだんだんと吸い込まれていった。


「さっすが〜」

「ほら、追いつかれるよ」


 俺たちが少し足止めをくらっている間にイーストンは距離を半分くらいまで詰めてきて、魔石を投げようとしていた。


 ここで俺はある事に気づいた。


「殿ちょっと交代して」

「はぁ?まぁいいけど」


 ロネは少し心配半分呆れ半分くらいで俺に交代してくれた。


 俺は黄金の卵を盾にしてみた、黄金の卵がイーストンにとっての宝物なら壊れるのが怖くて投げてこないと思ったからだ。


 だが、現実は非情だった。イーストンは黄金の卵を盾にされていても構わず、魔石を本気で投げてきていた。


「ドゴォォン!」


 俺はとっさに、黄金の卵を包み込んでいた心鏡の布でガードした。


「うそ〜ん」


 俺はさすがに黄金の卵が割れるかなと思っていたのだが、思いの外頑丈でヒビすら入っていなかった。


「それ本当に卵?」


 ロネは呆れるようにいった。


「多分、卵」


 俺は半信半疑で答えてみた。


 これは何の卵なのかは置いといて、イーストンが黄金の卵めがけて平気で魔石を投げつけてきたのは、この頑丈さを知っていたからだろう。


「もうすぐ出口だから、ロネは先に街に行ってお貴族様呼んできて〜!」

「わかった、本当にやばくなったら傷つけちゃっていいからね」


 そう言い残すと、ロネはイーストンとの追いかけっこをしていた時とは比べものにならないスピードで洞窟の出口まで駆けていった。


 俺も洞窟の外に出た。イーストンも同じように洞窟の外に出てきていた。俺はイーストンを警戒しながら、ある程度拘束しても迷惑のかからない場所を探していた。


 洞窟から十分に離れた場所で俺は黄金の卵をそっと地面に置き、そこから離れた場所に移動した。


 すると、イーストンは黄金の卵にしか目がいかないのか一直線に黄金の卵の下へいった。


 その瞬間地面と同化していた心鏡が黄金の卵ごとイーストンの下半身を布で縛り付けていた。


 イーストンは暴れているが、俺の心鏡は粘着性も操れるため、極限まで粘着性を高めた布で地面とイーストンの下半身を完全に固定した。


「早く、お貴族様呼んで来てくれ〜」


 もうやることがなくなり、暇なので1人で叫んでいた。




 ナンダと別れた私は洞窟の入り口で繋いでおいた馬に乗り、ラビュータスへと馬を走らせていた。


 森を抜けて広大な平原に出ると、前方に立派な城壁が見えてくる。私たちが拠点にしている都市、ラビュータスだ。


 この国——アルバッファ王国の中では平均的な規模の都市で、ここを治めているのはハールスドル・ウェザー子爵。今回の虹色に輝く鉱石の依頼を出してきた親族にあたるお貴族様だ。


 馬を全速力で飛ばした甲斐もあってか、すぐに城壁の門番へと辿り着いた。私は2人の門番の前で馬の手綱を引きながら挨拶をした。


「お疲れ様です」

「やぁ、朝ぶりだね、悪いけど、規則だから一応身分証明書か自分の身分を保証できるものは持っているかい?」

「はい、これです」

「うん、通っていいよ、面倒をかけてごめんね」

「いえいえ、いつもお疲れ様です、一つお聞きしたいんですけど、騎士団長様ってどちらにいらっしゃるかわかりますか?」

「うん?団長に用があるのかい?」

「はい、依頼を受けまして」


 私は門番に依頼書を見せた。


「名前を聞いてもいいかな?」

「冒険者のロネです」

「ちょっと待っててもらってもいいかな?」

「はい」


 私が返事をすると、門番の1人が詰所で休んでいる他の人に伝令を頼んでくれた。


 しばらくすると先ほど伝令をしてくれた人と大柄で筋肉質な騎士がやってきた。


「おーい、ロネ依頼はどうだった〜」


 この大柄な男がこの領地の騎士団長を務めており、領主の息子であるハールスドル・ウォード様だ。私たちとは少し風変わりな縁があるお貴族様でもある。


「そのことについてなんですけど、依頼品は森でいまナンダが見張っています」

「本当にあったのか……」


 本当にあるとは思っていなかったのか、呆然と驚いていた。


「いや〜、ガセネタで面白そうだからお前らに任せてみたんだけど、本当だったとはな〜」

「依頼品については虹色と鉱石という点は当たっていました」

「うん?まぁ見ればわかるか」

「はい、それについてなんですけどこちらに持っていくことが難しいのでご足労していただく必要があります」

「鉱石なんだろ?ナンダの能力だったら持ってくることはできるんじゃないのか?」

「いえ、実際はイーストンという魔物だったため、こちらに連れてくると被害が出てしまう可能性があるので難しいと判断しました」

「魔物が虹色の鉱石っていうのは意味がわからんが、まぁ、個人依頼をしてしまったからな、わかった、俺だけでも問題ないか?」


 お貴族様なのに護衛も付けず、1人で城壁の外に出かけるつもりらしい。相変わらず変わり者っぷりが激しいお方だが、ウォード様は騎士団長の名に恥じない実力者だ。近くの森くらいなら、そこまでの危険はないだろう。


「騎士団長様がよろしければ」

「おーけー、問題な〜い」

「では、私についてきてください」

「わかった」


 ウォード様がそう返事して馬に乗ったのを確認した後、私は洞窟に向かって再び全速力で馬を走らせた。

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