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壱萬六阡個
壱萬六阡個と聞いて、食堂では感極まった。青山さんがまずもうやってらんないよなあというと、周りは静まり返る。この人は仕事をしたくない質だから、必ずやらない方法を探す訳だ。
「こうなったらみんなで一緒にやめようぜ」
というのが彼の答えだった。
佐伯氏が高笑いをして答えたが、冗談であることはみんな承知であった。
「それはやばいですね」小野が言うと、
「面白い」と佐伯がなんとも言えない笑い方で答えた。
小野は佐野さん(あだ名はラーメン)がにこやかにしているのを見ながら少し談笑にふけると時間が来た。
「行くか」だとか気合を入れるかのように押忍と叫ぶような輩もいる。倉庫内の構内職員はほとんどがアルバイトで、手に職のない、知識もない人ばかりだ。ベージュの紙箱をただ仕分ける、ただ運ぶ、それだけの仕事になんの危険もないし、なんの技術もいらない。ましてや難しく考えることもない決まりきった作業が延々続いていくだけだ。一生がここにあるだろうか? それは考えるだけ無駄なことだが、仕事と割り切ってしまえば金を得る手段としてはひどく楽な世界であることは間違いなかった。




