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30歳ゲイの日常エッセイ  作者: 赤井獺京


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ふと耳に刺さる曲がある

 ふと聴いていた曲が思わず刺さる。そんな経験が一度はあると思う。僕に今刺さったのはカルメン・マキの「さよならだけが人生ならば」だった。


 さよならだけが人生ならば。


 20代前半ではこの歌詞を聞いても何も感じなかったはずだ。好きな人を失うのが怖かった僕は、自分のお気に入りの後輩たちを手元に置いて先輩風を吹かして暮らしていた。いつも一緒にいるメンバーがいなくなるのが怖くて怯えていた。


 それは人生の終わりに等しいと、本気で思っていた。


 だから誰かとさよならなんてしたことが無かった。恋人もいなかったからふられた経験も無い。ほとんど傷つかない人生を歩んでいた。


 だけどそれは突然起きた。

 一緒に働いていたお気に入りの後輩が二人、転勤になった。高校時代からの後輩だ。働く気力をなくして僕は仕事を辞めて、一人の後輩の方について都会に引っ越しをした(やばい奴だと思う。好きだったのだ)

 それからいろいろあって恋人ができてフラれた。

 そしていろいろあって後輩に嫌気がさして僕から縁を切った。


 いろいろあって、僕はようやく人並みに傷つくことができた。これは28歳を超えてから一気に起きた出来事だった。今まで甘えていたツケが回ってきたのだとも思う。

 だけどそのおかげで、一回り大きくなれた気がする。


 人は傷つかないと成長しないもの。それは身に沁みている。そんなことを思い出しながらその曲を聞いていた。そしてようやく大人になったなと、少しだけ思えた。


 だけど思い返してみると20代前半までにあった交友関係は一切なくなっている。これは僕だけが特殊なのか分からないけれど誰とも連絡を取らなくなった。

 連絡が来たと言えば前の会社の女の子からの結婚報告と(これも久しぶりの連絡過ぎて最初誰だったのか思い出せなかった)小学校時代の友達からの急な間違い電話だけだ。

ただ残っているだけのLINEグループでさえ、あけましておめでとうすら言わなくなってしまった。

もう会うことは無いのかもしれない。みんな子供ができて、それどころじゃないのだ。

別に死ぬまでにあと一度くらい、どこかで会えればいいか。


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