元カノからの鬼電
目を見開くとそこには血色の良い白皙の肌が広がっていた。
夏目ちゃんの頬はシミ一つなく、僕が寝返りを打つたびに豊満な胸がこれでもかと揺れる。
目の前に鎮座する官能的な光景と柔らかい膝の感触にパニックを起こした僕は、思わずソファーの端に飛び逃げた。
...まるで状況が飲み込めない。
「......あっ、起きた?もぉー、お酒弱いのに飲み過ぎ。はい、お水」
きめ細かく瑞々しい黄金のロングヘアーをたなびかせ、僕のことを全て見透かしているような、そんな表情で夏目ちゃんが水を差しだしてくる。
以前、杏南の実家を訪れた際に一度だけ顔を合わせた一歳下の女の子。
そんな彼女となぜカラオケボックスで、あんなことをしていたのか、寝起きの僕には皆目見当もつかなかった。
「おはよう。......あっ、こんばんはの方が良いか。それで、これはどういう状況?...悪いけど全然覚えてなくて...」
彼女の浮気が発覚し、目が覚めると美人な年下女子とカラオケで膝枕。
事実を無機質に列挙するだけでも、冷や汗が止まらない。
酔っ払った勢いで無理やりなんてことも、泥酔し、失うものがない僕ならばやりかねないだろう。
退学、逮捕、実名報道。最悪なワードが脳内を反芻し、酔いがサッーと冷めていく。
頭を冷やすため、僕は水を一気飲みした。
「......昨日は気持ちよかったね?わ、私あんなの初めてだったんだよ...!」
「そ、それってどういう!?」
「...ばか。女の子にそんなこと聞くなんて無神経すぎ。......まぁ。そういうところも含めて好きなんだけど」
「えっ.......マジで?ごめん、ちょっと色々混乱してて。え、待って...」
「あはは。ごめん、ごめん。冗談だよ。......やっぱお姉ちゃんがいう通りお茶目な男の子なんだね?」
夏目ちゃんは意地悪げな表情で微笑みながら、僕の肩をポンポンと叩いてくる。
「なっ!.......悪趣味なことするなよ。とにかく...よ、よかった。てっきり自暴自棄になって君のこと襲ってしまったのかと...恋愛経験少なくてそういう嘘見抜けないから、勘弁してくれ」
「......なるほど。そういうアンニュイで草食系な顔してお姉ちゃんのこと口説いたんだ~?...私、嫉妬しちゃうな」
「ひ、人聞きの悪い。僕たちは一応、真剣交際で、、」
「へぇ~?......私のファーストキス、ついさっき奪っちゃったのに?」
「え?」
「......気づかないんだ~?」
「な、何を?」
「さっきのお水、私と間接キスだったんだよ......?」
「...」
「ふふ、もぉ~顔赤くしちゃって。.......君ってば、案外むっつりくんなんだ~?ふぅ~ん?可愛いね。...お姉ちゃんにもそういう顔してたって考えるとムカつくけど」
「...お、おい!」
「あは...君がとっても可愛い反応するからつい。こほんっ、なら本当に瀬谷くんは何も覚えてないと。ふふっ、....18歳の女の子の前でお酒飲んで記憶飛ばすなんて悪いんだ~」
夏目ちゃんは静寂に包まれた真夜中の微睡をぶち壊すかの如く、元気溌剌でダル絡みしてくる。
メンタルが弱く、気弱な杏南とは違い、彼女は陽に属するタイプの女の子なのかもしれない。
金髪に染められた髪と耳元できらりと煌めくピアスがそれを強く物語っていた。
「それじゃ、昨日の経緯を説明するね。...あっ、でもその前に結構大事になってるみたいだけど大丈夫?」
姦しく残響するディスプレイには、現在進行形で杏南とサークルメンバーからメッセージが届き続けていたのだった。
長期連載に繋がるので、ぜひブックマークや評価よろしくお願いします




