サークルメンバーからのお叱り
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「...と、とんでもないことになってる」
杏南やサークルメンバーだけでなく、大学入学直後に何となく連絡先を交換した『よっ友』数人からもラインが来ていた。
僕のiPhoneはあまりの負荷に音を上げたのか、読み込み中を繰り返すばかり。
その様はまるでアイデンティティクライシスに陥り、精神的よりどころを求めている僕の痴態を揶揄しているかのようだった。
とにもかくにも、おおかた杏南の乙女の涙によって大学のやつらは涙ぐましくも、一致団結しているのだろう。
実に麗しい右倣えの仲間意識である。
彼ら彼女らからすれば、可愛い女子の痴情のもつれは最高の青春の1ページなのだ。
その動機は偽善から性欲まで千差万別だろうが、ありがた迷惑の極みである。
『本当にごめんね。断り切れなくて、あくまで仕方なくだったの!胸が張り裂けそうなくらい辛かった。君だけが良いんだもん!それでも本当に反省してるよ。ごめんさい!だから電話出て!あと慰めてほしいな?』
『俺らあんま事情は知らないけど、杏南ちゃんのこと傷つけるなよ?相談あるなら何時でも聞くから、とりあえず早く電話に出ろー』
『瀬谷くん大丈夫?きっと辛かったんだよね?でも、杏南ちゃんマジで良い子だから許してあげてほしいな。この前の女子会でも瀬谷くんのことばっか話してたよ』
ラインのアプリを何とか開くと、このようなメッセージが画面いっぱいに埋め尽くされていた。
日曜日の朝焼けを眺めながら、月曜日に人類が滅亡することを切に願い、スマホをベッドへ投げつける。
僕が生まれて初めて手に入れた存在意義はいとも容易く宙を舞い、勧善懲悪のチープな物語へとなり果ててしまった。
心に空いた傷は波となり、僕の希望をもぎ取っていく。
「珍しく荒れてるじゃん。どれどれ~.......って、おぉーこわ。メンヘラちゃんを怒らせるとコミュニティ総出で来るんだねー。ま、かくいう私もその一人なんだけど」
「は?」
「今日の夕方、やっとバイト終わった~って新宿でぶらぶらしてたら、お姉ちゃんから『彼氏と喧嘩したから探すの手伝って!』って鬼電がきたの......てへっ!」
「...可愛く言っても誤魔化されんぞ」
「わ、私も疲れてたし、人の恋愛に口を出す趣味もないから帰ろうとしてたんだよ!?......でも、たまたま通りかかった公園に酔っ払って潰れた君が寝てたの。近づいてみたら、私のことお姉ちゃんと勘違いして、その......き、キスとか!瀬谷くんの辛かった過去の話をしてくれて...ね?......私も帰るに帰れなくなったっていうか、、」
夏目ちゃんの口から発せられた僕への配慮マシマシな衝撃発言によって、文字通り僕の足は生まれたての小鹿のように、膝から崩れ落ちたのだった。




