↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/5

第2話 確認して、銀行に行く。

朝、目が覚めた。

昨夜はやはり興奮したが、床に入るとすぐ寝付いた。夜中に一度、3時半頃にトイレに起きた。夜中、週に三回くらいは二回起きる。昨夜は一回だったので、よく眠れた。

一晩に3回目が覚めるという高齢のお客様がいる。やはり昼間に眠たくなり、昼寝をされるとのことだった。

「昼間に寝すぎると夜眠れなくなって、また大変なんだよね」

そうぼやいておられたのを思い出した。

今朝は5時から起きている。

顔を洗ってから机の引き出しを開け、封筒から宝くじを取り出した。昨日念入りに見た、数日前の新聞を、もう一度広げた。

組番号。合っている。

一等の番号。一つずつ見る。やっぱり合っている。

前後賞も確認した。

「……やっぱり十二億だよな」

昨日は4回確認した。一晩寝て、頭がすっきりした状態で確認しても同じだった。

当選確実。俺調べでは。

ただし、俺調べで十二億円当選と言っても仕方がない。正式に確認してもらわないといけない。

「次は、銀行での確定だよな」

今日は火曜日。整体院には三件の予約が入っている。そして、ちょうど明日の水曜日は定休日だった。

「明日、銀行行かなきゃ、だな」

今日は普段どおり仕事をする。予約入ってるし。数少ないありがたい予約客だし。

朝食を食べる。いつもと同じつもりだった。

娘がこちらを見た。

「お父さん、どうしたの?」

「何が?」

「なんか今日、どこか変じゃない?」

「そうか?」

自分では普通にしているつもりだった。でも、やっぱり少し何か、リズムというか、様子が違うらしい。

「ちょっと考え事しててな」

「整体院のこと?」

「まあ、そんなところ」

嘘ではない。全部でもない。

娘は少し気になるような顔をしていたが、それ以上は聞かなかった。息子も仕事へ行った。

子供たちは、いつもの朝だった。

私だけが、いつもの朝ではなかった、らしい。

整体院を開ける。

一人目のお客さんが来た。施術を始める。

仕事が始まれば、不思議といつもの自分に戻った。

「ここ、痛みますか?」

「そこですね」

「じゃあ、まずは、全体的に緩めていきますね。あとで気になるところをしていきましょう。」

いつもの会話。いつもの施術。

自分の基本はここでの仕事だ。目の前のお客さんを大事に、集中して施術することだ。

一人目のお客さんを見送り、次の予約まで少し時間があった。

朝、考えていた疑問を一つずつノートに書き出して、調べる。

まず、どこの銀行へ行けばいい?

スマホで銀行のことを調べた。宝くじの高額当選金は、あのメガバンクの支店で手続きするらしい。うちの県内では1か所だけ。場所を確認する。車で行けば、それほど遠くない。

次。

何時頃に行く?

午前中がいいのか。それとも午後一番か。

できるだけ客が少ない時間がいい。高額当選なんて、可能な限り人に知られないようにしたほうがいい、らしい。

持っていくものは?

当せん券。

本人確認書類としては、免許証でいいかな?

念のため、マイナンバーカードも持っていこう。

それから印鑑。

通帳は?

ここの銀行には口座を持っていないけど。ああ、現在使っている銀行口座でいいのか?

「なるほど。高額当せんの場合、受け取りまで1週間程度かかるのか」

知らないことが多くて、勉強になるな。

必要なものをスマートフォンのメモに書いていく。

当せん券だけ持って行って、

「あれが足りません」

と言われて出直すのは嫌だ。

十二億円を受け取りに行って、忘れ物で出直しをする。それはちょっと恥ずかしい。時間ももったいない。

二人目のお客さんが来た。

スマートフォンを置く。施術する。終わる。見送る。

また調べる。考える。

服装はどうする?

スーツ?

いやいや。銀行に行くだけだ。かえって不自然だろう。

普段着でいい。ただ、あまりヨレヨレした格好もどうなんだ。

「別に面接じゃないんだから」

自分で自分に突っ込む。

いつも着ているシャツとズボンでいい。

だんだん、明日の予定ができてきた。

三人目のお客さんが帰った後、もう一度メモを見る。

銀行。場所。時間。持ち物。服装。

そして一番大事なのは、宝くじ。

「これ忘れたら、何しに行くのかわからんな」

明日は定休日。時間は十分ある。午前中に銀行へ行くことにした。

その日の仕事を終え、家に帰った。夕食を食べる。

娘や息子とは、いつもどおり話をした。十二億円のことは言わなかった。

銀行で正式に確認してもらうまでは。

まだ、俺調べだから。

翌朝。

いつもより少しだけ丁寧に髭を剃った。服は予定どおり普段着。

財布。

運転免許証。

マイナンバーカード。

通帳。

印鑑は、認めと銀行印を持っていく。(念のため)

必要と思われるものを確認する。

最後に茶封筒。

「よし」

いつものプリウスに乗った。

「少しいい車に乗り換えるかな?」

考えるだけで楽しい。

まあ、今は考えるだけにしておく。

茶封筒が入った鞄は、助手席ではなく自分の足元に置いた。信号待ちのたびに鞄を見た。

銀行の駐車場に着いた。

少しだけ車の中で今日の流れを確認し、忘れ物がないか確認した。

「よし」

鞄を持って車を降りた。

銀行の自動ドアが開く。

できるだけ普通に入り、受付で小さい声で話しかけた。

「あの……宝くじの当せん金について、確認していただきたいんですが」

受付の人の表情は特に変わらなかった。

「少々お待ちください」

案内された場所で待った。

しばらくして、担当の人が来た。

私は茶封筒から宝くじを取り出した。

「これなんですが」と手渡した。

担当者が券面を確認する。

そして、「高額当せんになりますので、確認のため少々お時間をいただきます」

と言った。「流石、メガバンクの行員は活舌がいいな。(笑)」

十二億円かもしれない紙切れが、自分の手元から離れて、落ち着かない。

待つ。こういう時、何をしていればいいんだろう。

周りを見る。銀行員が歩いている。お客さんが出入りしている。いつもの銀行の風景なんだろう。

この中で、「十二億円の宝くじを持ってきました」

と思っているのは、たぶん私だけだ。

昨日まで何度も確認した。今朝も確認した。

俺調べでは、間違いない。

でも、ここから先は俺調べではない。

しばらくして、担当者が戻ってきた。

「お待たせいたしました」

私は顔を上げた。

「当せんを確認いたしました。おめでとうございます」

プレミアムの一等と前後賞。合計十二億円。

「……そうですか」

自分でも驚くほど普通の返事だった。

十二億円。

銀行の人の口から聞いて、ようやく「当たったかも」から「当たった」に変わった気がした。

その後、当せん金を受け取るための手続きについて説明を受けた。

十二億円ともなると、その場で現金を渡されて、

「はい、どうぞ」という話ではない。

当然だ。手続きには時間がかかる。

本人確認。振込。そして今後のお金の管理。

一度に十二億円の話をされても、正直、全部は頭に入らない。

家族等にお金を渡す場合にも注意が必要らしい。

贈与税とかあるからね。

聞きながら、「これは一回で覚えるのは無理だな」と思った。

当せん金支払証明書の発行も依頼した。あとで必要になることがあるらしい。

そして帰り際、一冊の冊子を渡された。

高額当せん者向けの冊子らしい。

私は表紙を見た。

「その日から読む本~突然の幸運に戸惑わないために~」

「ふーん。」今すぐ読む気にはならなかった。今日はもう十分だ。

鞄に入れた。

プリウスに戻る。

運転席に座って、しばらく前をぼーっと見た。

十二億円。本当に当たった。

さて。これから、どうする。

私は鞄の中に入れた冊子「その日から読む本」をちらりと見た。

「その日からかー、やっぱり今日から読まなきゃな。どこで読もうかな。」

エンジンをかけた。


こんにちは。第1稿から大分経ちました。まあ、読んでくれている方はいないと思うので、誰にも謝りませんけど(笑)。もし、奇跡的にたどり着いて読まれた方がいらっしゃいましたら、感想、ご意見いただければありがたいです。その方には謝ります。「どうか、見捨てないでください。」と。よろしくお願いいたします。

※ 本作品は「カクヨム」にも掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。