「足音」
ホテルに泊まった時のこと。夜の11時を過ぎた頃、部屋の外で子供が裸足で走るような「ペタペタ」という音が聞こえてきた。
こんな時間に……とは思ったが、旅行先で興奮した子供が部屋を抜け出したのかもしれない。そう思って最初は気にも留めなかった。
だが、しばらくするとまた「ペタペタ……」と走る音。
別に騒ぐわけでもなく、ただ走り去るだけ。
しかし、またしばらくすると「ペタペタ……」。
流石に何かがおかしい。
今度聞こえたら確かめてやろうとドアの前に立ち、音が聞こえた瞬間に勢いよくドアを開けた。
——誰もいない。
隣の部屋に入ったのかとも考えたが、ドアが開閉する音はしなかった。
部屋に戻ると、再び「ペタペタ……」と走る音。
そこで、ようやくその違和感の正体に気がついた。
その足音は、毎回「右から左」へしか走っていかないのだ。
行きっぱなしで、戻ってこない。
(あ、これ人間じゃないな……)
諦めて気にせず寝ることにした。
翌朝のチェックアウトの時に廊下に出て、足元を見て固まった。
ホテルの廊下は、厚手の絨毯敷きだった。
そもそも、裸足で走ったところで音など鳴るはずがないのだ。
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