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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「虫の音」

ネット動画を観ていたときのこと。

画面の中では、二人組の出演者がスタジオで軽快なトークを繰り広げていた。


内容自体は面白かったのだが、どうしても気になることがあった。


トークの背景で、ずっと鈴虫の鳴き声が響いているのだ。

それもかすかな音ではなく、トークの邪魔になるほど「リーン、リーン」と異様にうるさい。


(スタジオのロケで虫が入っちゃったのかな……? それとも、自分の家の外で鳴いてるのか?)


あまりに気になったので、確認するために動画を一度ポーズしてみた。

すると、ピタリと虫の音も止まった。


再生すると、また「リーン……」と鳴き始める。


(やっぱり動画内の音か……)


そう納得し、しばらく我慢して観続けていたのだが、どうしても鈴虫の音が耳についてトークに集中できない。結局、途中で観るのを諦めて動画を閉じてしまった。


翌日、気を取り直してもう一度同じ動画を再生してみた。


(やっぱり昨日の動画、音聞こえるよね……?)


確認のつもりでイヤホンに意識を集中させたが、鈴虫の音なんてどこにも入っていなかった。


静かなスタジオで、ただ二人組が楽しそうに話している音声だけが、クリアに響いていた。

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