75/78
「親心」
友人が、知人のお母様が亡くなった際の葬儀に参列したときのこと。
式場の入り口近くで、親しい友人が人目もはばからず泣き崩れていた。
そのあまりの悲しみように、胸を締め付けられる思いで見守っていたときだという。
ふと気配を感じ、会場の奥へと視線を向けた。
式の準備が進む奥の物陰から、一人の女性がこちらの様子を心配そうにじっと覗き込んでいた。
(あれ……?)
違和感を覚えて会場内へ足を進め、遺影と女性の顔を見比べた友人は息をのんだ。
間違いなかった。
物陰から悲しげに友人の姿を見つめていたのは、本日見送られるはずの、亡くなったお母さん本人だったのだ。
自分が死んだことよりも、残された子供が泣き叫ぶ姿を誰よりも心配していたのだろう。
友人はそっと泣き崩れる友人の肩を抱き、耳元でこう囁いたという。
「あんまり泣いていると、心配してお母さん成仏できないよ」




