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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「起きて」

先輩のTさんは、お風呂に入るとついつい寝てしまう癖があるらしい。


「一人暮らしでお風呂で寝ちゃうのは危ないですよ。最悪、溺れて事故になりますから気をつけてくださいね」


そう注意すると、Tさんはケロッとした顔で言った。


「ああ、大丈夫大丈夫。寝落ちしても、必ず誰かが『起きて』って起こしてくれるから」


「……はい?」


冗談かと思ったが、Tさんは大真面目な顔をしている。


湯船で深睡に入りかけると、耳元でハッキリと声をかけられたり、肩をポンと叩かれたりして目が覚めるのだという。


「誰かって……Tさん、一人暮らしですよね?」

「うん。だから助かってるんだよね」


本人は「親切な何かが守ってくれている」と思っているようだった。

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