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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「催促」

友人が中学三年生の夏休み、夜中に一人で受験勉強をしていたときのこと。


ふと、静かな部屋の中に「チーン……」と仏壇のりんを鳴らしたような澄んだ音が響いた。

直後、どこからともなく線香の甘い匂いが漂ってきたという。


「なんだろう……?」


不思議に思ってふと柱時計に目をやると、針はすでに午前一時を回っていた。

日付は、八月十二日に変わったばかりだった。


翌朝、朝食の席で友人は父親に尋ねた。


「お父さん、昨日お墓掃除行った?」

「あッ! しまった、すっかり忘れてた……!」


頭を抱える父親に、友人が「やっぱりね」と呟くと、父親は不思議そうに顔を上げた。


「なんで分かったんだ?」

「昨日の夜中、たぶんおばあちゃんから催促があったよ」


昨夜の「音」と「匂い」の話をすると、父親は「なんだそれ」と笑っていたが、あれは絶対に掃除を忘れた父親への催促だったんだと思う、と友人は語っていた。

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