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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「仕事」

Aさんが夜中に目を覚まし、トイレに起きたときのこと。


用を足して寝室へ戻ろうとした際、廊下の先にあるリビングがうっすらと明るいことに気づいた。

ドアの隙間から覗き込むと、夫がパソコンに向かって何やら作業をしている背中が見えた。


(こんな遅くまで仕事かしら……)


声をかけて邪魔をするのも悪いと思い、Aさんはそのまま静かに寝室へと戻った。


ところが、ベッドに入ろうとして息が止まった。

掛け布団の中に、夫が横たわっていたのだ。


頭が混乱し、恐る恐る夫の体に触れてみる。


「うーん……」


夫は気持ちよさそうに寝返りを打ち、すやすやと寝息を立てたままである。


じゃあ、さっきリビングでパソコンを叩いていたのは、一体誰なのか——。


一気に血の気が引いたAさんは、それ以上リビングを確認する勇気も出ず、本物の夫にしがみつくようにして無理やり目を閉じたという。


「幽体離脱してまで仕事しなくていいのにさ……なんて、笑い話にもならないわよ」


Aさんは引きつった笑顔でそう語っていた。


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