「生米」
友人のBさんが、地元の仲間たちとキャンプに出かけたときのこと。
初日にテントを張って一泊し、翌日にみんなでカレーを作る予定になっていた。
食材は各自持ち寄りで、Bさんの友人であるGちゃんは「お米」の担当だったという。
その日の夜、Bさんは不意に妙な音で目を覚ました。
ガリっ、ボリボリ……ガリっ……。
暗闇の中で、静かに硬いものを噛み砕く音が響いている。
不審に思って音のする方を覗き込むと、テントの隅でGちゃんがひとり、膝を抱えて座っていた。
見ると、Gちゃんは持参した袋から生米を掴み、そのままボリボリと生で齧っている。
(えっ……寝ぼけてる……?)
声をかけようとしたBさんだったが、言葉が喉でつかえた。
月明かりに照らされたGちゃんの顔は完全に無表情で、焦点の合わない目でただ淡々と生米を口へ運び続けていたのだ。
その異様な雰囲気に尋常じゃない恐怖を感じたBさんは、声をかけることもできず、ただシュラフに潜って固まることしかできなかった。
恐怖に耐えているうちにいつの間にか眠ってしまったらしく、次に気がついたときには朝になっていた。
翌朝、Gちゃんは何事もなかったかのように「お米持ってきたよー」と袋を出し、無事に美味しいカレーが出来上がったという。
「本当にあの夜のGちゃんが本人だったのか、それともただの自分の夢だったのか……今でも自信がないんだよね」




