「インターホン越しの彼女」
暇を持て余し、友人の家に遊びに行こうと電話をかけた。
「今暇だからいつでも」と言う言葉に甘え、すぐに準備をして彼のアパートへ向かった。
部屋の前に着き、チャイムを鳴らす。
『はーい』
応答したのは、女性の声だった。
なんだ、彼女が来ていたのか。邪魔をしては悪いと思い、ドア越しに声をかけた。
「ごめん、彼女さんいると思わなくて。気まずいからまた今度にするよ」
『気にしないでください。ちょっと待ってくださいね』
丁寧な声だった。本人がそう言ってくれるならと、玄関の前で待つことにした。
しかし、待てど暮らせどドアは開かない。
しばらくして、背後から「もう来てたのか」と声をかけられた。振り返ると、友人が手にビールを2本持って立っていた。
「あれ、出かけてたの?」
「おう、お前と飲もうと思ってさ」
友人はそう言いながら鍵を取り出し、ドアを開けた。
暗い部屋に入り、電気をつける。当然、中には誰もいない。
「……彼女さんは?」
「ん? 彼女なら先週から実家に帰ってるよ。だから暇だったんだって」
友人は笑いながらビールをテーブルに置いた。
——じゃあ、さっきインターホン越しに話していた『誰か』は、今どこにいるのだろう。
これからこの部屋で暮らし続ける友人のために、私はその問を呑み込むことにした。
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