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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「空白の着信」

その日は大事な取引先との仕事があり、遅くまで打ち合わせが続いていました。


疲れ切った体でホテルに戻り、狭いユニットバスだったがどうしても湯船に浸かりたくなり、お湯をためて入りました。だが疲労のせいか、そのまま眠ってしまったらしい。目が覚めた時にはお湯もすっかりぬるくなり、体が冷え切っていました。


時刻はもう深夜3時近く。明日も仕事があるため、慌ててベッドへ移動して再びうとうとし始めた頃。


静かな部屋に、携帯電話の電子音がリリリリと響いた。

こんな時間に誰だろうと思いながらも、「もしかしたら取引先の人かもしれない」と電話を手にとりました。しかし、着信画面には何も表示されていない。通常なら電話番号や「非通知」「公衆電話」と表示されるはずなのに、画面は真っ白なまま。


不審に思いつつも通話ボタンを押すと、受話音の向こうから、


「ワシャワシャ……ワシャワシャ……」


と、意味をなさないノイズのような声が繰り返し聞こえ、そのまま不自然に切れた。

狐につままれたような気分だったが、翌日の仕事に響いては困るため、深く考えずにそのまま眠りにつきました。


翌朝、同僚にこの話をすると「それ、寝ぼけて夢でも見たんじゃないの?」と笑われました。

私は携帯の着信履歴を開き、「ほら、履歴自体はあるのに番号のところが空白だろ?」と画面を見せました。同僚は「うわ、本当だ……」と表情をこわばらせました。


「……それ、リダイヤルしてみたら?」


同僚に促され、その空白の履歴を押してみたが――電話が発信されることはありませんでした。

『隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~』をお読みいただきありがとうございます!

毎日20時に更新しておりますので、明日もぜひお越しください。


また、別作品の中編ホラー『群青の嘘 ~港の廃屋と消えた少女~』も連載中です。

『隙間奇談』とは一味違う、じっくり魅せるホラーとなっておりますので、こちらもあわせてお楽しみいただけたら幸いです!


▼『群青の嘘』はこちらから

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