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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「嘘だー」

近所に住む小学生の子供に、突然声をかけられた。


「この間の温泉、楽しかった?」

「えっ!? ……いつの話?」

「先月の最後の土曜日だよ」


そう言われて首をかしげた。

その日は朝から仕事で、一日中職場から離れられなかったからだ。


「その日は温泉に行ってないよ。ずっとお仕事だったもん」


そう答えると、その子は「えー! 嘘だー!」と声を上げた。


「だって、〇〇温泉の売店の前にいたじゃん! 私が手を振ったら、笑顔で手を振りかえしてくれたよ?」


相手は冗談を言っている様子もなく、完全に自分を見かけたと信じ切っている。

こちらがどれだけ「仕事だったから絶対に自分じゃない」と説明しても、その子は「絶対〇〇さんだった」と言い張って譲らなかった。


見間違いだと思いたいが、手を振ったら「笑顔で手を振り返してきた」という部分が、どうしても頭から離れない。

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