「渦」
会社の後輩であるYくんが、小学六年生のときの話。
家族で祖母の家に遊びに行った際、家族全員が買い物へ出かけることになり、Yくんは一人で留守番をすることになった。
暇を持て余した彼は、何か観るものはないかと室内を探し、見つけたホラー映画『リング』のDVDを再生した。
一人でテレビ画面に見入っていたが、しばらくすると、背後の廊下側に妙な違和感を覚えた。
祖母の家は古い造りで、居間と廊下を隔てるドアには、すりガラスが嵌め込まれていた。
ふとそちらに目を向けると、すりガラスの向こう側に、グレーと黒が混ざり合った直径五十センチほどの「渦」がぐるぐると巻いていた。
……なんだ、あれ?
不気味な光景に目を奪われ、映画どころではなくなってしまった。
恐怖と好奇心が混ざった感覚のままじっと見つめていると、その渦は「シュー……」と音を立てるように静かに縮んでいき、そのまま消えてしまったという。
意を決してドアを開けてみたが、誰もいない暗い廊下が伸びているだけだった。
「なんであの時、渦が巻いているうちにドアを開けなかったんだろう」
大人になった今でも、Yくんはそう悔やんでいるそうだ。
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