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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「山道の信号機」

バイク旅が趣味の友人Tから聞いた話。


ある夜、彼は見知らぬ山道を一人で走っていた。

ヘッドライトが照らす範囲以外は街灯もなく、完全な暗闇が広がっている。


ふと視線を上げると、暗闇の先、道路の上方にぽつんと赤い光が見えた。

信号機だろうか。だが、それにしてはやけに高い位置にある。


(なんだろうあれ……)


不思議に思いながらもバイクを走らせていると、距離が縮まるにつれて、その赤い光がスーッと垂直に降りてきた。

遠近感の錯覚かと思ったその瞬間——光は一転して猛スピードで急上昇し、夜空の彼方へと消え去ってしまった。


あまりの出来事に呆然としながらも、彼はなんとか無事に帰宅した。


後日、その話を聞かされた私が「それ何だったんだろうね?」と尋ねると、Tは真面目な顔で言った。


「うーん……たぶん人工衛星かな」


山道まで低空飛行してきて猛スピードで急上昇する人工衛星なんてあるわけがない。心の中で猛烈にツッコミを入れたが、本人が至極真剣だったので、私は「……まあ、そうかもね」とだけ答えておいた。

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