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「手を振る服」
Oさんが旅行中、車でドライブをしていたときのこと。
見知らぬ街を走っていると、沿道に建つかなり古びた団地のような建物が目に入った。
ふと見上げた2階のベランダに、何かが干されているのが気になった。
それは、全身真っ白な『ツナギ』のような服だった。
風にあおられているのか、その白いツナギは、まるでこちらに向かって大きく手を振っているかのように、ゆらゆらと揺れていた。
雑草が生い茂り、まわりに他の洗濯物はなく、ただそれだけが異様に浮いて見えたという。
当時は「変な服の干し方だな」というのと、「手袋みたいなものまで一体になっているツナギなんて変わっているな」と不思議に思う程度だったが、後になってOさんはふと思い返した。
「あの時は変だなと思っただけだけど……今思えば防護服か何かだったのかもしれないね」
そう言って笑うOさんだが、雑草が生い茂るくらい手が入っていないその団地は、本当に人が住んでいたのだろうか?
なぜあの真っ白な服だけが干されていたのか。
そして、本当に「服」だけだったのかは、今も分からないままだ。




