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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「清掃」

その日、私は試験休みだったので、午前十時頃に自転車でお昼を買いに家を出た。


スーパーへ向かってペダルを漕いでいると、前方を取り憑かれたように背を丸め、トボトボと歩く中学生くらいの男の子がいた。

(こんな時間に帰宅? それとも学校サボりかな……)

そんなことを思いつつも、私は大して気に留めず、その子の横を通り過ぎた。


買い物を終えて帰宅し、昼食をとった。そのあと戻った部屋の窓からふと駅の方を見下ろすと、作業服を着た清掃員の方々が線路脇を念入りに掃除していた。

そのすぐ後ろでのぞき込むように、昼間見かけたあの背中の丸い男の子が立っている。

微動だにせず、ただ清掃の様子をじっと見つめていた。


(あんなに近くにいたら作業の邪魔で怒られないのかな。それとも、何か事故でも起こしたんだろうか)

疑問に思いながら勉強に集中していると、いつの間にか男の子の姿は消えていた。


その日の晩御飯のとき、母親がふと思い出したように言った。

「近所の〇〇さんのところの息子さん、今日の昼間に電車に飛び込んだんですって……」

それを聞いた父親が、箸を止めて重々しく呟いた。

「ああ……俺、その子を見たかもしれない。学校がある時間なのにフラフラ歩いていて、声をかけようか迷ったんだよな。あのとき声をかけていれば、止められたのかもしれない……」


昼間に私が追い抜いた子。そして夕方、父親が後悔とともに語った子。

二人が見た男の子と、私が駅で見かけたあの姿は、きっと同じ子だ。


あの子は、自分が命を絶った現場で、自分の最期が片付けられていく様をずっと見届けていたのだろうか。

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