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「音だけの大浴場」
民宿で働いているBさんから聞いた話。
その日は先輩と二人で夜勤に入っており、深夜12時を過ぎた頃、事務室で待機していた。
静まり返った館内に、突然大きな音が響きわたる。
——ガラガラガシャン!
大浴場のほうから、積んであった桶が激しく崩れ落ちるような音だった。
「たまに夜中にお風呂に入るお客さんもいるし、誰か倒れたんじゃないか?」
心配になった二人は、急いで大浴場へと向かった。
先輩が男湯、Bさんが女湯を手分けして確認しに行く。
しかし、脱衣所にも浴室にも人の気配はなく、女湯の桶は整然とピラミッド状に組み上げられたままだった。
外へ出ると、先輩が「どうだった?」と聞いてきた。
「何もなかったです。桶もちゃんと綺麗に積んでありました」
「こっちも異常なしだな……じゃあ、今の音は何だったんだろう」
首をかしげ合ったが、その後は何事もなく夜が明けたという。
Bさんは「絶対あれはお化けだと思うんだけど」と言いつつ、不思議そうに首をひねっていた。
「でも、姿も見せないで音だけ出すお化けなんて、本当にいるのかな?」




