58/80
「下見」
小学校の教師をしている友人から聞いた話。
児童たちの宿泊学習に備え、1人で肝試しの森ルートを下見に行ったときのことだ。
まだ夕方だというのに森の中はすでに薄暗く、一歩足を踏み入れるとほぼ暗闇に近かった。
だが、事前にコースを熟知していた友人は、懐中電灯すら点けずに暗がりをスイスイと手慣れた様子で進んでいった。
その途中、ふと視界の端に違和感を覚えた。
森の先に、何かが『いる』。
視線を向けると、そこには明らかに何者かの強い気配が佇んでいた。影は暗くてよく見えないが、じっとこちらを窺っているのを感じる。
身を硬くしてしばらく見つめていると——その気配は、音も立てず、ふっと消えてしまったという。
無事に森を抜け、後日その話を私にしてくれた友人はこう言った。
「猪だったらヤバかった。もし子供たちを連れていたら、幽霊より獣の方がよっぽど怖いよ」
そう語る友人に「確かにそうだね」と頷きつつも、私は——音も立てず、気配ごとふっと消えるような獣なんて、どっちにしろ恐怖でしかないのだが、と思った。




