56/78
「狸の回り道」
母親に「おじいちゃんたちのお墓参りに行くけど、どうする?」と聞かれ、たまには行くかと車に乗っていったときのこと。
自宅からお墓までは、車で30分ほどの距離。かなりの田舎道だ。
しばらく走るうちに、あたりの景色はどんどん暗さを増していった。
助手席でぼーっと外を眺めていた私は、ふと強い違和感を覚える。
(あれ……? さっきもあのお店、通らなかったっけ?)
「ねぇ、あのお店さっきもあったよね? 個人のお店みたいだけれどチェーン店がなのかね?」
尋ねると、運転席の父親は「そうか……?」と言いながら徐にタバコに火をつけた。
窓を少し開け、紫煙をふーっと外へ吐き出す。
「もうすぐ着くよ」
父親がそう呟いた瞬間、急にあたりがふっと明るくなり、目の前に目的の墓地が広がった。
驚いて車の時計を見ると、出発してから1時間以上も経っている。
「……ずいぶん時間がかかったね」
「狸のせいだわ。帰りは大丈夫だよ」
母親は事もなげにそう言った。
言葉通り、帰りは何事もなく30分ほどで自宅に着いた。




